見出し画像

数学の話

身も蓋もない言い方をすれば、数学が嫌いです。ただ、この嫌いというのは「できないという事実が嫌」というだけであって「数学そのものが嫌い」ではありません。むしろ逆です。数学に対してロマンを感じますし、数学ができる人に異常な憧れを抱いています。憧れが転じて、ウィキペディアで数学者の記事を読んだり、フェルマーの最終定理とかABC予想とかを調べたりしていました。まあ、全く理解できないんですけどね。所詮ないものねだりです。宇宙にロマンを感じるのと似ているような気がします。

どれくらい数学ができないのかというと、高校1年の中間テストで0点をとったことがあります。名前を書き忘れたから得た0点ではなく、単純に分からなかったが故の0点です。要するに馬鹿です。最初の3問くらいは分からないなりに回答しましたが、それ以降の記憶がありません。たぶんあきらめて寝ていたと思います。
わたしは中学のころから数学に苦手意識を持っていましたが、ぎりぎりのところで崖から落ちるのを踏みとどまっていました。何とか赤点は免れていたわたしが高校数学の壁にぶちあたり、見事玉砕したというわけです。至極まっとうに正規ルートを突き進んだようなかんじです。そりゃあそうなるだろうな。

数学が全くできなくても、恥や惨めさは感じていませんでした。ぜんぜん褒められたことではありませんが、今となってはこれで良かったかもしれません。ただでさえ情緒がブレブレな年頃ですから、根暗がさらに根暗になっていたような気がするので。克服のために頑張ろうとしていた時期もありますが、全く成長しませんでした。ほんっとに分からないんです。もはや何が分からないか分からない。分からないを書きすぎてゲシュタルト崩壊です。

わたしが通っていた高校は、学業よりも部活動に重心が向いているようなところがありました。どの部活もジャンル問わずとても力を入れて活動していて、入学する生徒の3分の1が推薦入学するような学校です。わたしも例に漏れず、部活動をするためにこの高校に入りました。そんな部活馬鹿たちがわんさかいる高校ですので、クラスも必然的にそういった人間が集まります。お気づきかと思いますが、そこまで落ち込まなかった理由は仲間がたくさんいたからです。わたしが先生なら頭を抱えています。本当に心からお詫び申し上げたいです。

わたしのクラスにはわたしを含めた6人くらいの数学ができない人がいました。不名誉な6人です。ただ、共通点があるというのはすごいですね。性別も部活も個性も全く違うのに、謎の連帯感が生まれていました。テストの点数を一斉に見せ合ってド底辺の争いを繰り広げたり、一緒に補習を受けて分からないの大合唱をしていました。赤点を免れて「裏切者!」と言われたりもしました。それに対してこぶしを振り上げて喜んだことを覚えています。性格の悪さが表れていますね。箸が転がっても笑ってしまう年頃ですので、お互いの点数を見てめちゃくちゃ笑っていました。普段は別の友達と過ごしているのに、数学が関係すると集まっていました。恥を承知でいいますが、とっても楽しかったです。これがあったので、数学がトラウマにならず、憧れのままでいられています。何を言っとるんだという話ですね。すみません。

先生がわたしたちのことを受け入れてくれたのも大きかったと思います。出来損ないというレッテルを貼らずに接してくれました。それぞれ数学以外に得意なことがあって、そこに目を向けてくれたことも大きかったです。わたしも数学以外は平均的にできたので、そこを伸ばせばいいよと言われたのも救いですね。諦められていたとも言い換えられますが、そこは目を瞑ってください。結局文理選択で文系を選択し、英語を重点的に勉強しました。なんやかんや進級も進学もできました。
この経験があったので、できないことを責めないということをモットーにしています。まあなんせわたしができないことだらけなので。お互い良いところを見つけていきたいですね。

綺麗にまとめたいのですが、結局は数学が全くできない学生生活を過ごしたというだけの話です。自分への戒めとして記そうと思いました。いつか克服できたらいいな、数学。