いつか海になる

※この話は緊急事態宣言前の出来事になります。現在は外出自粛中です。

ひいおばあちゃんのお墓参りに行かないか。
お父さんはそう声をかけてくれました。参加者は、おばあちゃんとお父さんとわたしの3人とのこと。曽祖母のお墓にはもう長いこと行っていません。そろそろ行かないと怒られてしまうだろうなあ。わたしはお父さんの誘いに乗ることにしました。

当日の朝は6時ごろに起床しました。眠い。とてつもなく眠い。みんなと合流して車に揺られている間もうたた寝をしていました。時々起きて、天気がいいなと無心で外を眺めました。

途中、サービスエリアに立ち寄り、朝食を調達しました。おばあちゃんはもう済ませていたみたいで、ホットコーヒーを。わたしはチョコクロワッサンと水。お父さんはサラダパンとお茶。
サラダパンってご存知ですか。コッペパンのなかにみじん切りにしたたくあんとマヨネーズを和えたものがサンドしてあります。お店でずらりと並べられたそれはテレビで紹介されていたご当地パンでした。レトロな見た目がとてもかわいいです。お父さんは美味しい美味しいと言いながらぺろりとたいらげました。帰りも立ち寄り数個買っていました。笑ってしまいました。

2,3時間揺られて目的のお寺に着きました。車から外に出ると空気が綺麗でとても気持ちが良かったです。駐車場には大きな桜の木がありました。もう少し暖かくなったら満開の桜が見られるのだと思います。きっととても綺麗なんだろうな。

駐車場のすぐ傍に曾祖母のお墓はあります。とてもきれいなところでした。ひんやりと冷たい空気が日差しの暖かさと混ざり合い、とても心地よい温度でした。そんな空間にひっそりと曾祖母のお墓はありました。雲一つない綺麗な空で、風が吹くと潮の香りがします。「海の匂いがする。」思わず呟くと、近くに海があるということをお父さんが教えてくれました。なんだか泣きたいくらい澄んだ場所でした。わたしが死んだらここに埋めて欲しいな、と思いました。このとき、悩んだり考えたりすることが多かったので余計にそう思ったのかもしれません。だいぶ疲れていました。

お墓を綺麗に掃除して、お花を供えて、手を合わせます。こういうとき、何を伝えればいいのかいつも悩みます。傍で見守ってくださいとお願いしてしまうと、そこに留まってしまうということを以前どこかで聞いたことがありました。それ以来そう思うことはやめて、向こうで楽しく過ごしてくださいと思うようにしています。気になったらたまに覗きに来てください。

曾祖母はわたしが幼いころに亡くなりました。加えて遠方に住んでいたということもあり、しょっちゅう顔を合わせていたわけではありません。ただ、本当に時々だったのですが、お盆になると曾祖母の古い小さな家に家族で遊びに行くこともありました。居間は木の匂いと畳の匂いがします。台所はこじんまりとしていて、使い込まれていました。お風呂は狭くて深くて、青かった気がします。平屋だったのか2階建てだったのか、よく覚えていません。それくらいふわふわとした記憶です。ただ、居間のテレビはいつもアニマックスがついていました。アニメの専門チャンネルですね。わたしは祖母の家で見たパタリロの記憶が強烈にあります。あの有名な曲は未だに頭から離れず、たまに歌います。そして友人に変な顔で見られます。(全く世代ではないので)大きなスイカを頬張りながら、アニメを眺めて、海に遊びに行く。楽しい夏休みです。

曾祖母の記憶もあいまいなのですが、声に張りがあって、凛としていた人でした。遊びに来たわたしたちにとても良くしてくれて、歓迎してくれていました。曾祖父はわたしがもっと幼いころにすでに亡くなっていました。介護用ベッドのうえで挨拶をしたことを覚えています。

人が亡くなるってあっけなくて突然で、とても悲しいですね。その話もいつか書きたいです。書きたいのですが、未だに自分の中で思い出にできていないので、もう少し時間がたってから書こうと思います。

綺麗なお墓を眺めながら、曾祖母はたくさんの人に愛されてきたんだなと感じました。ずっと誰かのなかで息をしているんだな、生きているんだな。

帰りの車から見た海はきらきらと輝いていました。眩しくて直視できないほどでした。また、曾祖母に会いにあのお墓に行きたいと思いました。歓迎してくれますように。

この件があってから、絶対に文章で残したいと思っていました。書けて良かった。これからもたくさん書いていきたいです。