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サンタクロースを倒した日

サンタクロースを倒した日

サンタクロースを倒した日2


サンタクロースというヤツは、子どもたちの欲するプレゼントが何であるかを探るために十月頃から傍に潜んでいるらしい。
それを聞いた僕は俄然、今年こそはあのひげ面にいっぱい食わせてやろうと、サンタクロースを捕獲する作戦を練った。
 僕は、ヤツをおびき寄せる為に『サンタさんへ』などと記された封筒を、勉強机の上に掲げ、足下には狩猟にて鹿等を捕獲する際に使用するトラバサミを設置した。
 トラップを仕込んだ翌朝、まぬけなサンタクロースは見事に罠に引っかかったようで、トラバサミはその恐ろしいギザギザの刃を互いに合わせており、僕の部屋の床には、ヤツの纏う衣色のような血痕が散っていた。
 机の上の手紙は封を切られており、昨晩僕の部屋にサンタクロースが侵入したという痕跡が至るところから読み取れる。
僕は食卓で新聞を広げる父にスポーツ用品店に連れていって欲しいと頼み込んだ。それは僕があの手紙に「テニスラケットが欲しい」と記したからである。
無論、僕はテニスラケットを望んでなどない。テニスラケットとはサンタクロースをおびき寄せる一種のデバイスでしかないのだ。
昨晩負傷したヤツが、おめおめとテニスラケットを購入しようとしているところをこの手で捕獲する。これが僕の作戦だ。
 僕は意気揚々と父の車で大型スポーツ用品店へ向かった。開店してまもない故、まだあの肥満老人らしき姿はないが、現れるのも時間の問題だろう。作戦は滞りなく進んでいる。
今朝から左足を引きずる父だけが気掛かりだが、計画に差し障りはないはずだ。

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