見出し画像

こにゃる

こにゃる

こにゃる2


金に困ったらタピオカを始めろ、なんて言葉を至る場所で耳にするほど、タピオカの経済効果というものはすごい。
それはタピオカの原価がとんでもなく安いからであるのだが、しかしながらそうなると、原材料の争奪戦になる訳で、今まさに経済的、金銭的ピンチの僕にとってはキャビアと同等なくらい手に届かない存在だ。
 とにもかくにも丸くて、プニプニしていればいいのだ。
そう言い聞かせて、試しに玉こんにゃくをほうじ茶に入れて売ってみたら、驚くべきことにこれがヒットした。
 果たしてこれはスイーツなのか、煮物なのか、ちっとも分からないけれど、今や原宿で展開している店は恐ろしい程の行列を成す人気だし、有名なモデルたちも低カロリーで美容にいいからと率先して飲んでいて、それが若い女性を更に夢中にさせた。
 その人気にあやかって国の偉い人たちが僕の前に現れ
「こんにゃくは日本人に昔から親しまれていた食べ物だから、近く国賓として招待したいとある人にあなたの商品を食べさせたい」
と圧せられた。
 僕としては、これ以上ない広告であるから二つ返事で快諾をした。
 それから国賓として来日した方は、日本文化を楽しみ、ゴルフをして、ほどよく汗をかいた後、僕のほうじ茶こんにゃく、商品名『茶KONNYAKU』を手渡された。
 国賓のその人は、ほうじ茶の中に潜むこんにゃくを一目見るなり激高して、茶KONNYAKUを地面に叩きつけた。
 後に分かったことだが、海外ではこんにゃくのことを『悪魔の舌』と呼んで忌み嫌っている人もいるそうだ。
厳格なカトリックであったその国賓の方にとって玉こんにゃくを差し出される行為とは、仏教的に言うなれば『マーラの素揚げ』的な食べ物をどうぞ、と差し出されたような感覚であろう。
 実のところ、今外国と行っている戦争の発端は、僕が生み出した玉こんにゃく茶が火種だと言うことは、ここだけの秘密だ。
 それにしても、僕が店で使用しているこんにゃくは全て、しっかりアクを抜いているというのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?