水道止められた。
こんな天気の良い日は授業なんて抜け出しちゃおう。
ということで現在、退屈な授業を抜け出して僕は大きな木の下のベンチに座ってこの記事を書いている。風が心地いい。幸せな天気だ。
授業を抜け出すのにパソコンほど大きなものを持って出るのは気が引けたから、この記事はスマホで書いている。スマホとイヤホン、あとは水道局からの封筒が入ったクリアファイルだけを持って僕は教室を抜け出した。
授業を抜け出すのってわくわくするよね。別に何をする訳でもないし、そもそも授業に行かないことも普段からあるんだけど、抜け出すのってちょっと違う。なんだかテンションが上がっちゃう。
ここまで来る途中、クリアファイルを逆さに持ってたみたいで中身をぶちまけちゃったけど、それでもやっぱりご機嫌だ。水道局の封筒の「至急ご確認ください」みたいな真っ赤な文字が恥ずかしくて急いで回収した。
このベンチに座ると、「やっぱり授業抜け出したの正解だったな」とか思っちゃう。いい天気だよ。さっき水道局に電話をする前には足元に雀が来ていた。
可愛かった。子供の頃に読んだ「スズメぼうし」って絵本を思い出した。
こんなに天気がいいと僕のお気に入りの黄色のニューバランスも輝いてる気がする。安田講堂の前のベンチで黄色のスニーカー履いて「水道止められたんですけど…」って電話してる人を見かけた人が居たなら、それが僕だ。
えー。
はい、水道止められました。
先に逆ギレしておくけど、事務能力がねーんだよ!!うるせえ!!求めんな!!
まあ、そういうことです。春に引っ越した時、事務手続きみたいなのがちゃんとできてなかったらしいんですね。それで止められました。
昨日家に帰って蛇口を捻って、水が出なくて首を捻って、水道の元栓見に行ったら「止めました」って紙がくくられてた。ルパンがやるやつじゃん。「お宝はいただいた」って。
それから恐る恐るポスト確認しに行って、水道局からの「至急ご確認ください」封筒を2つ見つけた。先週投函されたであろうやつと昨日投函されたであろうやつだった。先週のやつを開けたら予告状みたいなのだった。「来週、水道を止めに参上する」とか書いてあった気がする。僕は「おのれルパン、ワシをおちょくりやがって」と歯噛みした。
僕は次に、昨日投函された方を開けた。するとそこには「ごくろうさん」という文字とあのサインが!ワシはぐぬぬと奥歯をかみ締めて封筒を握りつぶし、「待てルパーン!!」と駆け出した。
ワシは住宅街を走ったが、手がかりがない。たしかに追い詰めているはずなのに足取りが掴めない。
その時1人の老人が向こうから歩いてきた。ワシは息を切らしながら「ルパンを見なかったか」と聞いた。すると老人は「あっちに行きましたよ」と奥の道を指さした。ワシは「ご協力感謝します」と言い急いでそちらに走った。そしてその先の角を曲がると、行き止まりであった。
どういうことだ、あの老人は嘘をついたのか?いや、もしかして。
あの老人はルパンの変装だったのか!!
クソ!騙された!
その事実に気づいた瞬間、ワシはまた駆け出した。
「おのれルパーン!!」
ワシの声が虚しく住宅街に反響した。
はい、気をつけまーす。
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