見出し画像

2020年度注目の広告出稿方法「デジタル音声広告」の可能性について

●デジタル音声広告とは

デジタル音声広告(オーディオアド)とは、Spotifyradikoと言った「デジタル音声メディア」への広告出稿のことです。最近ではAmazon Music Unlimitedにおいてもデジタル音声広告が配信開始されました。また、音声メディアではありませんが、Twitterでも音声ツイート機能が実装されるなど、デジタル上での音声を使った訴求は注目を集めるマーケティング方法となっています。

日本国内において、2020年のデジタル音声広告市場規模は2019年とくらべて2倍以上の市場規模になると言われており、そして2025年には420億円にまで上昇すると言われています。

画像7

●デジタル音声広告の市場規模が拡大している理由

なぜ、これほどまでにデジタル音声広告が成長しているのか。2つの大きな理由が挙げられます。

① デジタルガジェットの進化
スマートフォン、スマートスピーカー、ワイヤレスイヤホンなど、家でも外でも自分の好きな音声コンテンツを視聴できるガジェットの進化と普及が挙げられます。これにより、家の外でも中でも自分の好きな音声コンテンツをいつでも楽しめるようになりました。

画像1

② 音声配信サービスの急速な拡大
全世界的に音声配信サービスの市場が拡大を続けています。下記の図は、「少なくとも月に1回はポッドキャスト等の音声配信サービスを聴いているユーザーの割合」です。中国では約30%、アメリカでは約26%と大変多くの人が音声配信サービスを利用しています。

画像2

日本国内でも、VoicySpoonなど音声配信サービス自体が増加しており、現状は8%ですが今後も増加すると予測されます。それは、国内の音声サービス自体も増加しているからです。

「音声配信サービス業界カオスマップ」はこちら

ちなみに、今インフルエンサー達が自らのポッドキャスト番組などを持ち始めたかというと、動画配信よりも簡単且つ、TwitterやInstagramよりも深いエンゲージメントを獲得できるからと考えられます。既に海外ではYouTuberのように、音声メディアで広告収入を得るPodcasterという存在も増えています。
また、ブログサービスや既存の各種SNSのように同じテキストのフォントで書かれた投稿よりも、音量・声色・間など、意味+αの温度が伝わることにメリットを感じているユーザーも少なくありません。このあたりについては、Voicy代表緒方氏のnoteが詳しいのでそちらをご覧ください。

(なお、弊社ではポッドキャストコンサルティングサービスも実施しております!国内超大手企業のコンサルティング実績もございます。)

●デジタル音声広告の強みとは何か

さて、ここからが本題ですが、デジタル音声広告の強みについて掘り下げていきます。まずはSpotify for BrandsというSpotifyの広告主向けの資料に記載されているデータはご覧ください。

画像3

さて、何故一般的なディスプレイ広告と比較すると、

・広告認知を 24% 高める
・情報収集、購買意欲を 2倍以上 向上 
・情報を有益だと感じる可能性が 28% 高まる

といったこれらの数値が、デジタル音声広告において向上するのでしょうか。それはデジタル音声広告の特徴に起因しています。

①完全視聴されやすい

デジタル音声広告の特徴の一つとして、各種音声メディアの広告商品において、クリエイティブをスキップさせず、完全再生されることが挙げられます。そのため、広告主の伝えたいことをきちんと最後まで聞いてもらうことが出来ます。
一方、TwitterやInstagramなどのSNSはユーザーの興味がない広告の場合、スワイプやタップで違う投稿に飛んでしまうことがほとんどです。また、YouTube等動画サービスでは完全視聴のサービスもありますが、広告をスキップできたり、その瞬間だけデバイスから目を離すことが出来るとも言えます。
しかし、デジタル音声メディアを聴いている途中でわざわざ耳を塞いだり、イヤホン・ヘッドホンを取るなどの行動を取る人は少ないと想定され、機能的にもユーザーの行動的にも最後まで聴いてもらいやすいメディアと言えます。

② 「耳の可処分時間」はまだまだブルーオーシャン

下記の図は総務省統計局のデータを元に、日本人男女の土日と平日それぞれの種類別行動のグラフになります。

画像4

各種行動を分類し、緑色の部分が「聴覚でしか訴求できない行動」で、オレンジ色の部分が「視覚でも聴覚でも訴求できる行動」となります。例えば、仕事をしている時、ランニングをしている時、車を運転している時などに視覚を通して訴求することはほぼ不可能と言えます。これら「ながら時間」にデジタル音声広告は訴求ができるところが強みです。一日の中で、「聴覚」を通して訴求するメディアでしか接触できない時間帯が、約6時間もあると言えます。

また、今後5Gが発展し、視覚領域でのマーケティング手法は動画を中心に多くが注目を集め、「視覚」を通して訴求するマーケティングは、レッドオーシャンになることは火を見るより明らかです。それに比べて、デジタル音声広告はまだキャズムは越えておらず、現状では先行者優位も得られる状況です。

③ 音声と記憶の仕組み

デジタル音声広告というよりも、「音声」自体の特徴として、長期記憶に残りやすいと言われています。下記の図は消費者のマーケティング行動と記憶の関係を図にしたものです。

画像5

聴覚からの刺激は大脳辺縁系に伝わり、さらに記憶を司る海馬や扁桃体への刺激も含まれるそうです。その記憶には2種類あり、短期記憶(例えば、3日前の昼ごはんのことを覚えているかどうか)と長期記憶(例えば、箸の持ち方を覚えているかどうか)があります。その中で音声は、長期記憶に格納されやすいと言われています。

ここで言いたいことは、広告はどれだけリーチが出ても、どれだけ面を稼いでも覚えてもらわなければ意味がないということです。現状デジタル音声広告の商品は、リスティング等の刈り取り系の広告商品や、各種SNSの広告商品と比べてリーチの単価は高い状況にあると言えます。ただ、どれだけリーチを獲得しても、覚えてもらえるかどうかは別問題です。
「完全視聴されやすい」「耳の可処分時間はブルーオーシャン」「音声と記憶の仕組み」というポイントを踏まえると、デジタル音声広告は「訴求内容が記憶されやすい」ということが他メディアの広告商品と比べた際の強みと言えるかもしれません。

●主要メディア「Spotify」と「radiko」について

ではデジタル音声広告を出稿するとなった際に、候補に上がる主要メディアである「Spotify」と「radiko」の主要な項目を比較してみましょう。

・Spotify
ユーザー数:未公表
ユーザー属性:35歳未満が70%、男性54%:女性46%
露出タイミング:無料で使える「Spotify Free」を使っているユーザーに対して、楽曲と楽曲の間で広告が流れる
ターゲティング:性別、年齢、曜日、時間、地域、視聴ジャンル等
その他:動画広告・リンククリック広告が出稿可能
・radiko
ユーザー数:月間ユニークユーザー数約 700 万人(2019年3月時点)
ユーザー属性:平均45歳、男性65%:女性35%
露出タイミング:全radikoアプリ使用者に対して、提供クレジットと番組の間で広告が流れる
ターゲティング:性別、年齢、番組ジャンル等
その他:動画広告・リンククリック広告は出稿不可

2つの媒体で決定的に違うことは、ユーザー属性が全く違う点です。訴求すべきターゲットに応じて、出稿すべき媒体を検討していくべきです。また、Spotifyはリンククリックや動画広告の出稿が可能ですが、radikoでは不可となっています。こちらも訴求目的に応じて検討していくべきと言えます。クリエイティブに関しても、楽曲と楽曲の間なのか、それとも会話と会話の間なのかという点に着目すべきと言えます。

なおラジオ広告との違いは、デジタル音声広告だからこそできる、精度の高いターゲティングと、リーチ数の見える化など、データを活用した広告出稿が可能な点です。

●日本国内の音声広告事例

実際に音声広告を出稿している企業の事例をいくつかご紹介します。

・印象的な音を活用してアテンションを獲得した事例
藤原竜也 の「絶叫」を サウンドロゴ のように: Spotify デジタル音声広告、映画『Diner ダイナー』の活用事例

「音声広告のために、このセリフをわざわざバイノーラル化した(映画本編では通常録音されている)。ヘッドホンやイヤホンで聴くと、まるでボンベロが頭の周りをぐるぐる回っているかのように聴こえる」と上記記事内でもあるように、ただのセリフではなく音自体でアテンションを獲得できるようにした事例と言えます。
この手法は、声や音を発する必要性のあるエンターテインメント業界だけに限定されることではありません。例えば飲料メーカーが夏にビールの音で訴求することや、旅館やホテルなどの観光業界が冬に温泉の流れる音で訴求するなど、言葉ではなく音でイメージが訴求できるプロダクトやサービスでも使える手法です。

・声のプロ、声優を活用して話題になった事例
「SUUMO」音声ドラマに花江夏樹さんと花澤香菜さんが出演!理想のお部屋を探す男女の物語

リクルートが運営する不動産情報サイトの「SUUMO(スーモ)」のキャンペーンに声優の花江夏樹さんと花澤香菜さんが出演。理想のお部屋を探すために、毎日SUUMOをチェックする音声ドラマをYouTubeで展開した際に、音声広告を活用した事例となっています。
動画広告に俳優、モデルなどを起用するのと同様に、音声広告には声優を起用することはとても理に適っています。また、著名な声優さんを起用することで、プレスリリースなどが多く掲載され、PR効果も期待でき、業種業態を問わず活用できます。

現状、多くの企業の出稿目的は「認知獲得」または「興味喚起」がほとんどで、その方が実際に有効です。その中でも「若年層に訴求したいから」という理由でご相談を頂くことが多い状況です。
また、KPIに関しては、ブランドリフト調査が最も測定しやすい状況です。リーチ単価、クリック単価、アクション単価などの広告指標で測ると、どうしても他の媒体と比べて数値の結果はあまり芳しくないものになることが多いです。代理店側の提案時や、事業主側の方が上長を説得する際は、ブランドリフトが上がるという点を握った方が事故なく納品が出来るかと思います。

●これからのデジタル音声広告を一緒に作りたい

いかがでしたでしょうか。デジタル音声広告の可能性が少しでも伝われば幸いです。なお、Modern Ageが所属する株式会社トライバルメディアハウスは、Spotifyの認定代理店に選出されました。既にデジタル音声広告の案件をクライアント様と一緒に実施しております。

画像6

とりわけ、声優を起用した音声広告プランニングサービス「VOICE BIRD」が好評をいただいており、ブランドリフト調査において好意度と購入意向を大幅に向上させた実績もございます。その他デジタル音声広告等のセミナーなども定期的に開催していますので、是非お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?