第4話 彼の者
実はうちには息子もいます。
本を読むのはきらいだし、隙を見てはズルをしようとします。私が隠していたお菓子を食べて、食べかすを放置しています。
「食べたでしょ」
と言ったら、
「食べてない」
と言います。証拠の食べかすを提示したら、
「だって、ち〇ち〇がそうしろって言うから」
男性の神秘です。
運動が嫌いですが、家でゲーム中継ばかり見せるのもどうかと思い、サッカーチームに入れました。
レクリエーションのチームなので、下手でも、やる気がなくても試合には出してもらえます。今のところ二年連続得点ゼロ。前回のゴールは自殺点でした。
全員が点を取ろうと必死になる中、無得点単独首位を爆走中です。
まるで何かに憑りつかれているかのようです。
そんな彼は一度、小学校の入学を拒否されました。というのも、入学前試験でボイコットを試みたからです。
テストの日、駐車場から学校の入口まで歩いて一分のところを、牛歩戦術で十五分かけて入口に到達。先生から聞かれたことは聞かないふり、一緒に受けた女の子の友達に叱咤激励されてようやく口を開きました。それでようやく、ボイコットしていたことがバレてしまい、見事に入学を許可されました。
女の子の言うことは聞くのです。
彼《か》の者からの指示でしょうか。
入学前、保育園にも通っていましたが、そこでもボイコットをしていました。
誰とも話さず、遊ばず、おやつもお弁当も食べず、ただ、一人で黙って過ごしました。渡された課題もやらず、面談では留年をすすめられました。
「何かの病気なんですかね?」
と聞いたら、
「いや、確信犯だと思います」
と、先生は言いました。
「一度だけ言われたことがあるんです。自分はこんなことやりたくないのに、なんでやらなきゃいけないんだ、って」
息子よ。いい加減、ち〇ち〇の言うことを聞くのはやめなさい。
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