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鳥籠姫シリーズ

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中学時の恩師に捧げた、ふありの書斎の処女作です。 日頃書いている少女小説とは異なる、童話のような雰囲気の優しい物語です。 是非、一読してみて下さい。
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#小鳥

鳥籠姫 act.1

鳥籠姫 act.1

いとおしい小鳥
きみはぼくだけの
いつもそばで歌っておくれ

あなたの願いはどんなことでもかなえてあげたかったの

だけど願いだけここに残してあなたは消えた

永遠の旅へと

海の見える丘の家に

時間だけが静かに積もる

わたしはわたしを ここに閉じこめた

柳の枝で編んだ鳥籠

 ある海の見える丘に、一軒の小さな家が建っていました。広々とした丘にぽつんと建つ姿は物寂しく、海から流れてくる風だけ

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鳥籠姫 act.3

鳥籠姫 act.3

 メルトゥイユのもとに、虫の知らせが届きました。丘の家の少年と別れてから数ヶ月経った今、少年の求める声が聞こえてきます。

愛おしい小鳥 

メルトゥイユ どうか戻ってきておくれ

 メルトゥイユは、柳の巣から飛び出しました。仲間たちが止める声にも耳を傾けず、吹雪の中を必死に羽を羽ばたかせました。
「あの人が呼んでいる。寂しくて泣いているんだわ。ああ、わたしはなんて薄情だったのかしら…。あの優しい

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