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異世界転生してもいいことなんかないじゃないか 第1話 復讐劇の始まり

私の名前は夢見堕芽蔵ゆめみ だめぞう無能なサラリーマンである。何をやってもうまくいかないし、毎日上司にも年下の部下にも怒られている。同期からは煙たがれれいて、当然彼女もできたことがない。今日も仕事から帰ってきて、アニメを見る。この時間が唯一の至福の時だ。

 私は最近、異世界転生系のアニメにハマっている。生まれ変わって異世界で無双するなんて、なんて素晴らしい話なんだ。私も転生したらきっと無双できるはず。そんなことを思いながら、私は眠りについた。

 次の日、私はいつもより早くめが覚めた。そのためいつもより早く家を出て、いつもより1本早い電車に乗った。いつもと見える景色が若干違う。ちょっと早く起きるだけで、こんなにも非日常を味わえるのか。私は駅を出て、会社近くの河川敷を散歩した。朝の空気がすがすがしい。気づいたら私は走り出していた。私は普段運動などしない。その私が急に走りだしたので、足をくじいてしまいバランスを崩した。私はそのまま近くの川に落下してしまった。

 その川は思ったよりも水深が深かった。私は泳ぐこともできないので、溺れてしまった。運悪く周りには誰も居なかった。私は呼吸ができなくなり、意識を失ってしまった。


「これからは誰にも負けず立派な男になるんだぞ。」

 そんな声で私は目が覚めた。声の主を見ると、男の人が私を見ている。そして私の横には女の人が寝ていた。(私が女の人と寝ている!?)私は驚き立ち上がろうとするが、体を起こせない。

「綺麗なお子様ですね。」

 私は誰かに抱きかかえられた。そこで初めて私は置かれている状況を把握することができた。なんと私は産まれたばかり赤ちゃんになっていたのだ。


ー10年後ー

 私が赤ちゃんに生まれ変わってから10年が経過した。さすがに10年が経つと、私はこの世界を色々把握することができた。なんと私は人間として死ぬことによって、異世界転生をしたらしい。この世界は魔法が使える世界。私が住む国は「ヴァルハラ」。私はヴァルハラの第三王子「トール」という名で生まれ変わった。念願の異世界転生。しかも一国の王子として生まれ変わったのだ。これで人生は薔薇色。この世界で無双をすること妄想していたが、現実は全く違った。

 この世界は、人々が魔法を使って生活している。魔法を使えない者など存在しない。しかし私は魔法が使えなかった。みんなが魔法を使えるから、魔法を使えない人は人に非ず。家族の私への対応はまあ、ひどかった。

 事の発端は、私が5歳の頃。魔術の修行が始まったときだ。私にはヴァルハラで最も評判の良い魔法使いが先生として派遣された。両親は私に向かって

「お前は兄さんを超える立派な魔法使いになるんだぞ。」と笑顔で言った。

 私は親からとても期待されていたが、その期待に応えることはできなかった。いくら頑張っても、どんなに修行しても魔法が使えないのだ。次第に父の私を見る目が、期待から失望、哀れみに変わっていった。

 10歳になったある時私は、兄に呼び出された。兄の名前は「ナーガ」。兄は、史上最年少の15歳で王国騎士団団長に任命された、いわゆる天才である。私はトイレに呼び出されたことを不思議に思いながら、トイレに入った。そこには兄とその友達が数人いた。

「こいつが前に話した弟のトール。ほんと魔法が使えないダメな奴なんだ。」

そう言って兄は、私を空中に浮かび上がらせた。

「うわぁ!やめてよ兄さん!」私は情けない声を上げる。

「やめてほしかったら魔法使ってみろよ。」そして兄は、魔法で私の服を全て脱がせ始めた。

「おいみんな見ろよ!コイツはあそこもダメダメなようだぜ!」兄がそう言い、みんなが一斉に笑い出す。私は怒って兄に殴りかかる。しかし、魔法を使える兄には勝てない。私は兄とその友達に集団でリンチにされ、ボコボコにされた。

 またある時、私は姉と一緒に座学の授業を受けた。私の姉は「ヴィーナス」、13歳である。姉は10歳の時から、ヴァルハラ魔女コンテストで毎年1位を獲得している。ヴァルハラ魔女コンテストは、容姿と魔法の力をコンテストする大会だが、姉はぶっちぎりで優勝している。姉もまた容姿と才能に優れた天才であった。

 私が姉とその友達と一緒に座学を受けていると、姉たちがひそひそと内緒話をしているのが聞こえた。

「トールのやつ、ナーガ兄さまにボコボコにされたらしいわよ。」「ぷっ!ダサーいw」どうやら私のことを噂しているようだ。私は姉たちを睨んだ。だが、姉たちは冷ややかな目で私を見る。

「なんかあいつがこっち見てくるんですけど。」「マジキモい」

 私はそんなことを言われ、心がボロボロになった。すると先生に当てられる。

「トール君。君はこの問題を解けるかな?」

 私は答えようとしたが、「ブヒ、ブヒ」としか言えなかった。姉が魔法で、私がブタ語しか喋れないようにしていた。私はみんなに笑われた。

「先生、私が答えますわ。」そう言って姉が答えを言って、先生は「正解!」と言って姉を褒める。

 姉は王族というだけでなく、実績があるので、先生も姉を注意できないのだ。

 私は兄弟からのいじめに耐えられず、両親に相談することにした。まず父である「ジャック」に相談したのだが、父は真面目に立ち会ってくれなかった。

「なぜ私に助けを求める?お前が魔法を使えないのが悪いのだろう。悔しかったらみんなよりも3倍も4倍も努力をしろ!」結果、私は父に怒られてしまった。

 だが、母だけは違った。

「あなたは悪くない。誰がなんと言おうと、いじめる人たちが悪いわ。魔法が使えなくてもきっとあなたに向いていることがある。」母は笑顔でそう言った。

 母の名前は「スカイ」。母は病弱であるため、普段は床に伏しているが、私が来ると毎回体を起こして、私の話を聞いてくれた。母だけが私の唯一の癒しだった。

 ある時、私がいつも通り母に愚痴を言っていると、母は真剣な眼差しで私に言った。

「私に何かあったら、スカーレットという人を頼りなさい。あなたのことを頼んであるわ。」

 数日後、母は急逝した。病死とのことだった。私は部屋で1人で泣いていたが、母の言う通り、「スカーレット」という人のところに行くことにした。このまま城にいても何もいいことはない。そう思って出口に向かっている途中、父に出くわした。

「僕はここを出ていく。僕を探さないでくれ。」私は父に見得を切った。すると父が口を開いた。

「探さないでくれ?探すわけないだろう。出て言ってくれるなら私も助かるよ。お前は私の唯一の恥だ。二度と戻って来ないでくれ。」

 私は泣きながら走り去った。父が私に失望していたのは分かっていたが、直接口にされると私は耐えられなかった。

 私が城の門まで来たところで、兄と姉に呼び止められた。

「こいつ毎日毎日母さんのところに行ってたらしいですわ。」

「母さんはコイツにストレスを感じて体を壊したんだ。」

 2人は私を冷ややか目で見た。そして私に暴力を振るった。私は悔しくてたまらなかったが、体が動かなかった。

 すると急に2人の動きが止まった。そして2人の後ろに都合よく穴が空いた。穴の底を見ると泥水が溜まっていた。私は2人の前に立ち上がった。(何を考えている?)(やめろ!)そんな眼差しで2人は私を見る。私は今まで2人にひどいことをされた。その悔しさを込めて、私は2人を穴に突き落とした。

 2人は悲鳴とともに穴に落ちる。私は穴底を見た。すると普段は優雅な2人が泥まみれになって溺れていた。私は少しスカッとした思いをしてから、城の敷地を出た。

 すると急に女の人が話しかけてきた。

「まさかここまでひどいとはね…。さっきのはどう?少しはスッキリできたかしら?」

 どうやらさっき兄弟が動けなくなったり、穴が空いたのはこの人の仕業のようだ。彼女と話し込むうちに彼女は母が言っていたスカーレットという女性であることが分かった。

「スカイは私の古い友人でね。生前、彼女にあなたの面倒を見るよう頼まれてたのよ。最初はあなたの世話をするだけのつもりだったけど、あなたいじめられてるでしょ?」彼女はそう言って私を鋭い目つきで見つめた。

「…。」私は何も答えなかった。

「どうせならさっきみたいに兄弟たちに復讐したくない?」彼女が笑みを浮かべる。

 そうだ、人間だった頃も転生してからも何もいいことなかった。ここで引いたら一生同じままだろう。ならせめてあいつらに一矢報いてやる!私の目に火が灯った。

「お願い…します!」私は彼女に大きな声で返事をした。

ーTo be continued ー

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