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■11.川を越えていく(6)

真ん中の女が言った。
「では、志望理由と自己PRを3分程度でお願いします」
「はい、私は……」

あれこれと話をしていった。真ん中の女に踏み潰されたような顔の二人のオジサンたちにも質問され、回答し、私も質問し、回答され、私自身について、応募しているその仕事について、深掘りしていった形となった。

「あなたが今いる部署のその仕事と、応募しているこの仕事とでは、何が違うと思いますか?」
白髪の男が言った。大下という名だ。採用されると、大下の部下になる予定である。

「お客様の気持ちがそれほど前向きでない、場合によっては嫌がっているケースもあるかと思います。それにより、成果には繋がりにくい仕事であると想像しています」
私はそう答えると、すかさず大下が声を大きくして言った。
「そうなんです!そこなんです」

私が想像していたことは、ドンピシャだった。まさに大当たり。大下は日頃よりその部分を課題とし、新しい顔ぶれに刷新したい様子だった。手応えを感じ、私は心の中でガッツポーズをした。

その後の質問では、成果をどう出していったらいいか、誰とチームになって進めていったらいいか、まさに採用されて、業務の打ち合わせをしているかのような面接となった。あっという間に30分が過ぎ、終わりに差し掛かる。

「この結果は、採用の場合は木曜日の18時までに電話します。そうでない場合は郵便で応募書類を返却しますので…」真ん中の女が言った。私は静かにうなづくと、また深く礼をして面接室を退室した。

結果はどちらに転がってもいいな、と私は思った。後悔はない。結構頑張れたと思う。もし、今回落ちたとしても、また次があるさ、なんて前向きな気持ちで本社ビルを出て行った。


(ただの日記です)
(少しフィクション入ってます)

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