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都内の私立高校出身者、地方の公立高校教員となる(2)

 地方で生まれて地元で就職する、地方で生まれて大学で東京に出て東京で就職するのは当たり前。しかし、東京で生まれて東京で学生生活を送り、地方に就職すると、「なぜ」「どうして」と言われます。「東京で何かしでかした」「事情があるみたい」と疑われることもあります。
 東京は「地元から離れた場所で暮らしている人」が大多数。だから、盆と正月は新幹線が満席になって高速道路が渋滞する。でも地方では…そんなことに気づくのは、東京を離れたから。

自分の高校受験はこんな感じ

 父の転勤のため、中学は東京ではない地域で卒業しました。都立高校は受験できなかったので(このあたりのことは、後日追って)、高校受験は私立のみで3校出願しました。
 3校の選択は「夢・現実・滑り止め」というセオリー通り。結果もセオリー通りでこんな感じ。
 夢……………補欠合格からの正規合格
 現実…………合格(ここに通うことにしました)
 滑り止め…上記2校で合格が出たため受験せず
 夢は、偏差値も高いですが、東京六大学への合格者も多い(当時、またMarchという言葉はない)。
 現実・滑り止めで重視したのは、六大学への合格者がいるかどうか。つまり、偏差値は低くても、そして数は少なくとも、「そういう大学への合格者がいるということは、上位層への指導ができる高校」と考えました。
 そんな経験から、あんまり偏差値とかは気にしない思考が生まれました。  
 受験の基本は個人の努力。でも、その努力を理解し、応えてくれる先生がいれば何とかなるという発想です。この発想は、「高校の価値は国公立大学の合格者数で決まる」「国公立大学合格者の大量生産」という価値観と相性が悪く、のちに悩むことになります。

地方進学校の受験

 高校受験のパターンが私とかなり異なります。
◆公立1校しか受験しない
 確かに、大学進学を考えると、その地域のトップ進学校に行くしかないわけで、そこを受けるしかない。つまり、滑り止めという発想・経験がない。
「第一志望のみを受験して合格」という成功体験が、大学受験を考えるベースになります。

◆公立1校、私立1校を受験
 滑り止めが私立。高校受験は私立が先なのでここで合格。その後、第一志望の公立を受けるという流れ。ただ、地方の私立高校では、ほぼ全員合格も少なくない。私立高校第一志望者は極めて少なく、そういう生徒さんは推薦で合格済み。歩留まりを考えると、一般入試は全員合格にきわめて近いケースも。

◆公立高校の2次募集を滑り止めにする
 私立が費用がかかります。というわけで、私立を受験しない生徒さんも少なくありません。すでに人口減少は顕在化しており、地域のトップ校以外の高校は定員割れを起こしています。定員割れの場合、2次募集があります。
 実業高校から大学進学、中堅進学校から難関大学に進む生徒さんには、2次募集合格組が多いです。

高校受験の経験が大学受験に反映される

 と言っても、全員が第一志望しか受験しないというわけではありません。
 かつての私と同じように、「夢・現実・滑り止め」で5~6校受験する生徒さんが過半数。これは国公立・私立も含めて。
 一方で、「とにかく早稲田に行きたい」といって早稲田の文系学部全部受験する生徒さんとか、国公立一本勝負という生徒さんがいます。高校受験だって第一志望しか受けてないけど受かったし、ここは進学校なんだから、○○大学だって受かるでしょという発想。
 要するに「滑り止め」を想定しないのです。これは、結構衝撃でした。もちろん、そういう生徒さんは東京・予備校にもいます。ただ、浪人覚悟というか、そのための経済的支援が家庭にあるとか、医学部などの難関学部希望なので一浪くらい当たり前とか、保護者の方も医師で浪人経験があって「そういうもの」という感覚がある…というケースが多かったです。
 でも、こちらでは少々異なります。全員がではありませんが、都会の予備校ではあまり想定できない状況を抱えているケースがあります。

◆保護者の方が進学に理解を示さない、反対する。
 要するに、高校を出たら働くことが当たり前、大学行ってどうするの、何の意味があるのというパターン。どうしても行きたいなら、お金のかからない国立×自宅通学で…。

◆理解はあっても先立つものがない
 要するに、経済的に難しい状況がある。大学には奨学金でと言うが、奨学金の情報はあまり持っていない。高校生でも受給できる奨学金の存在も知らない。まず、受験料の捻出をどうするか…。

◆家庭の経済状況を忖度し、国立のみ受験とする
 長男である自分が受験で家のお金を使ってしまうと、弟・妹の進学機会を奪う可能性がある。だから、節約・低費用・家庭の負担減が優先。

私たちに求められるのは…

 受かる大学を探すことではないんですね。
 そもそも、本人の責任ではない事情で「受験に制限」があります。ただでも地方では大学の数が少ないです、その中で学びたいことを実現できる大学、かつ経済的な負担が少ない大学はさらに限られます。となると、自宅から通える「地元国公立大学」にならざるを得ません。
 なるほど、多くの国立大学が「総合大学×すべての学部をそろえている」のは、こういう事情に対応する意味もあるのかと、個人的に考えました。
 となると、とにかく基礎を徹底し、学力を高め、得点力をつけないといけません。受かる大学を探すのではなく、通える大学に合格させないといけません。その大学は、旧帝国大学だったりするわけで、東京も含めて全国から受験生が集まるわけで…。
 要するに、大学受験の全国大会でベスト8位以上に導くことが求められるのです。ライバルは、中学受験から鍛えられている高校生、大手予備校やサピックスなど集中的に勉強している都会の高校生。
 さて、これをいかんせんです。

               つづく…

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