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突然吹奏楽部の顧問になる⑴

 地域の進学校であるF高校での出来事。
 ある年の2月、校長先生に呼ばれ、何かと思えば、次年度から吹奏楽部の正顧問になれという話…。私、音楽じゃありませんけど…。

背景にある事情は「学級減=教員定数減」

 学校には「教員定数」があります。根拠はクラス数。
 ただし、決まっているのは「全体数」であって、各教科に何人先生を振り分けるかはある程度「学校裁量・校長判断」が優先します。
 県内人口3番目のF市ですが、2000年頃から人口減少は目に見えるようになり、小学校・中学校の統廃合やクラス減が進んでいました。そして、高校もクラス減となります。 
 ちなみに、1クラス減ると、教員定数が3人減ります。この3人を、どの教科から出すか…ですね。影響を受けやすいのは、社会科・理科。
 たとえば、理科は「物理・生物・科学・地学」の4科目から成りますが、履修生徒数が少ない、担当教員の持ち時間が少ない…と削られます。学年6クラス以下の高校で、理科4教科を存続させるのは「教員定数的」に難しいのです。だから「理数科」を作ったり、「スーパーサイエンススクール」に応募して、定数維持、場合によっては加配を狙います。これは社会科も同様。「倫理の授業・専門の先生」って、大規模校にしかいないはず。
 で、F高校では、学校長判断で「音楽」を削ることにしたようです。
 前年、美術を講師にすることでさんざんもめたのに…、今度は音楽って。
 音大に進む生徒さんは毎年いて、数年に一人は東京芸術大学音楽学部への合格者も出すのに…。何を考えているんだか…。

音楽の先生がいなくなれば、合唱や吹奏楽の指導者もいなくなる

 音楽の先生は、合唱と吹奏楽と、両方の顧問・指揮者です。
 某芸術大学卒業の立派な先生。学校だけでなく、市民合唱団の指揮者も勤めています。いうならば地域の音楽業界のボスですが、本人にはそんな意識は毛頭もない。ちなみに、管内の中学校の音楽の先生、吹奏楽・合唱部の顧問の先生の多くは、この先生の教え子(つまりF高校の卒業生)。
 その人を、切るのですか・・・。
 それは、芸術の才能や志を持つ生徒さんの可能性をつぶす可能性もあります。何より、合唱部と吹奏楽部、誰が指揮・指導するんですか…。吹奏楽の部員は70名くらいいますよ。

私の音楽歴?

 一応、趣味で楽器を演奏します。
 中学時代は吹奏楽部でした。打楽器担当…。
 しかし、嫌なことが多かったのです。打楽器と一言で言いますが、中には、多種多様な楽器があり、誰が何を担当するかでもめるのです。
 打楽器の中で男は私一人でした。で、私はいつも「シンバル」。シンバルが嫌なわけではありません。結構奥深い楽器です。
 ただ、私が担当する理由は「重いから女子には無理」。そして、私はシンバル固定で、あとは女子でけんかしているのです…。
 音楽が好きで、打楽器もシンバルも好きですが、部活動としての吹奏楽部は嫌いでした。その頃、バッハに目覚めた私はC管の楽器を演奏したと思いフルートを習い始めました。近所のヤマハ音楽教室ですけど…。そして、家ではバッハをフルートで吹くという毎日。
 高校に進んでも吹奏楽部に入る気はさらさらなし。某文化部の帰宅部員となり、週末は市民オーケストラでフルートを吹いていました。ブラームスに目覚めたのはこの頃。
 大学では、ジャズバンドのサークルでサックス吹いていました。ジャズ研のような「ハード系×本格派」ではありません。
 それが、「全国規模のコンクールのある合唱・吹奏楽」の顧問になるのは無理。指揮を振ったことはありません。音楽の専門教育も受けていません。バッハとブラームスとコルトレーンが好きなおじさんに過ぎません。まして、音楽の先生・地域の音楽活動の中心となっている大先生のあとは、絶対に無理。何よりも、生徒さんがかわいそう。
 「私を減らして、音楽の先生を残してください」と校長に伝えた言葉に嘘はありません。

職員室の原理

 教員は、運動部の顧問ができて一人前だそうです。
 美術・吹奏楽・文芸などは芸術科・国語科の(弱い)先生がやるもの。
 先生になったら運動部。経験のないスポーツでも教員になって覚える。生徒と一緒に練習して身につける。これが、今も続く価値観。
 私は教員になって以来、文化部と運動部の副顧問を同時に一つずつ担当してきました。正顧問は1つでいいけど、副顧問なら2つ。文化部の副顧問1つは許されないのだそうです。文化部は運動部に比べると楽だからという理由だそうで…。
 ちなみに、F高校では、「吹奏楽・合唱部」と「陸上部」の副顧問をしていました。これですね…、大会シーズンが異なるので、日程が重なって困ることはないんです。その代わり、土日はどちらかの練習・遠征・大会・本番が入るので、週末は引率でつぶれます(楽器運びや機材運搬、けが人が出た場合のケアなどなど)。指導はしません(できません)が、身体拘束時間は、正顧問より長い。しかも、陸上では選手招集など運営、吹奏楽の大会では受付などの役員もやります。
 陸上の県総体(5~6月)が終わると、吹奏楽の大会(7~8月)があり、陸上のインターハイ(8月)があり、合唱の大会(8~9月)があります。

 部活動の顧問が大変のは、私のように副顧問を複数持った場合もなんです。責任者ではないかもしれませんが、けが人やトラブルなどがあった場合の処置は私になります(顧問はチームの指揮がありますから)。遠征の場合の宿や移動手段の手配などの事務もありますし、部費会計を担当することも多いです。
 そして、練習や大会では、果てしない待ち時間があります。
 この時間に、教材研究したいですよね…。
                     つづく…

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