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『ナラの世界へ』 子猫ナラとマッチョ男の純愛物語 翻訳化から1周年を迎えて! 

2018年9月、スコットランドの青年ディーンは、自転車で世界を旅する途中、山の中で捨て猫ナラと運命的に出会い、ふたりで旅を始めます。

スリルに満ちた、感動の旅行記!
これは、子猫と青年の純愛物語だ

そのときヨーロッパの都市は
新型コロナ蔓延の真っ最中だった!

階段を駆け上がってドアをノックしたときには心臓がバクバクしていた。
ぼくは、いままでの人生で、これほど強く誰かに会いたいと念じたことはなかった。
ドアを開くとすぐに、ナラがロケットのように飛んできた。
息が顔にかかるほど、ぼくにしがみつく。
肋骨が飛び出してしまいそうなほど、ナラの呼吸は深くて激しい。
間違いなく、ナラは状況を理解していた。
もう少しで会えなくなるところだったのを、悟っているのだ。

本書より

ふたりが山中で出会って約1年半後、2020年4月、
ディーンはビザの申請のためロンドンにいた。
ナラはハンガリーのブダペストに預けられ、ひとりディーンを待っていた。
ちょうどそのころ、世界中に広がっていたのは、
新型コロナのウィルスだった!
ヨーロッパの各都市はパンデミックに襲われ、ロックダウンを開始!
各国の国境は次々に閉鎖され始めた!
ハンガリーもその寸前だった。
ディーンはブダペストのナラのもとへ戻るべく、ロンドンの空港に行った。
しかし、出発案内板を見て愕然とする!

ぼくのフライトは未定のままだ。早く表示が出ることを望みつつも、
それが“キャンセル”だったらと思うと恐ろしい。
実際、その表示が多くなっていた。
案内板に“キャンセル”の文字があふれてきた。
離陸予定時刻まで三〇分を切るというところで、
ついに案内板の表示が変わった。
“搭乗中”
ほとんど人のいない通路を全走力で走った。

本書より

ディーンの頭には、ブタペストで彼の帰りを待つナラのことしかなかった。


2021年、コロナの収束を待ちきれず、子猫ナラとディーンは
ふたたび旅に出た。いまヨーロッパにいる。
ふたりはそのうち日本へもくると言う! 

ぼくら日本の旅好きも、早く外国の旅に出たい。
閉塞状況もそろそろ限界だが、まだ少し時間がかかりそう。
ここはひとつ、ナラとディーンの旅日記でも読んで、
ウキウキわくわくドキドキを楽しんではどうでしょう!
今度旅に出るときにバッグに入れていってもいい。
旅なんか、と言う人も、猫好きならばアッというまにナラにハマります!
保障します。

ここではいくつか、ふたりの旅シーンをご紹介。
これは、トルコのカッパドキアに近い森のなかの出来事です。

 森の中でさえも暑くて眠れなかったので、ヘッドホンをつけてユーチューブのビデオを見始めた。数日中にチャンネルを開設する予定だったから、ほかの人がどういうことをしているか見たかったのだ。午前一時くらいだったろうか、ナラが突然ぼくに飛びついて、肩にのぼった。足元でぐっすりと眠っていたのが突然だ。何かがナラを脅かしたのだ。耳をぴんと立て、目は皿のように見開いている。

 すぐに、原因がわかった。ヘッドホンをはずすと、深くて強い息遣いが聞こえた。近くをゆっくりと動いている。あたりは真っ暗で月明かりもほとんどないが、間違いなく大きな生き物だということはわかった。必死で考える。あれは何だ。ジャッカルか、オオカミか。いやもっと大きい。シカか、ウシの類か。いやそれなら音でわかる。ひらめいたものは衝撃的だった。クマだ。肝は据わっているほうだが、そのときは完全に動揺した。

 ナラをひっ掴んで、テントの片側を大きくあけた。裸で寝ていたが、服を着るなんて考える余裕もない。クロックスだけ履いて、走った。数百ヤード離れた道にたどりついたところで、足に尖ったものが刺さっていることに気がついた。血が流れている。ナラも怖がって、世も末とばかりにぼくにしがみついている。

 落ち着くのにしばらくかかった。我に返ると、道の真ん中で真っ裸でつっ立っている。荷物を取りに戻らないといけない。残っているとしてだが。もし本当にクマだったら、自転車は無事だろうか。

 しばらくするとようやく森の中に引き返す勇気が出てきた。葉っぱが揺れる音や、枝が折れる音に飛び上がる。木々の影が生き物のように見えた。そう、ぼくは恐怖で怯えあがっていた。

 テントに戻って、短パンにTシャツをかぶり、全速力で荷物をまとめた。バッテリーがなくなったので、自転車のライトはつかない。小さな懐中電灯を持って、暗闇の中をできるだけ急いで移動した。ナラを自転車の前に入れてから、テントをたたんだ。ほとんど機械的にてきぱき片付け、自転車を押して森を通り抜け、安全なところまで来た。

 無事に道まで戻ってきたときには、安堵のあまり大きな声が出た。

本書より


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【書名】 『ナラの世界へ 子猫とふたり旅 自転車で世界一周』
【定価】 1760 円(10%税込)
【仕様】 ソフトカバー・288ページ
【発売】 2021年5月8日

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