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聞き耳攻防戦(エッセイ)

高校野球を観戦しに行くと、周りに座っている観客の人達の会話が聞こえてくる。

ルールを説明している声や、選手の情報、チームの力や野球は関係ない日常の話まで。

たまにシビアな話が聞こえてくる事があり、聞きながら、ちょっとムカッとしたり戸惑ったり(笑)

もちろん、私が喋っている会話も聞こえているんだろうな〜と思っている(笑)

そんな私が座っていた観客席の後ろには、小学3から4年生位の男の子と、お母さんが座っていた。

「もう1試合目終わったよ、帰ろっ」

「え〜、まだ居ようよ。それにさ、まだお母さんは焼きそば食べてないから、」

「いいよ〜、帰ってから食べればー」

「お母さんは今食べたい」

「ねえ〜、早く行こ!」

親子の帰る帰らない論争勃発!

どうやら男の子は、早く家に帰って野球をしたいようだ。けれどお母さんは、まだ球場に残って次の試合を観戦したい様子。

「次の試合少し見よ〜よ」

と、お母さん。

「だって次の試合始まるまでまだ時間あるよ、グランド整備して、キャッチボールしてノックがあるんだからさ〜」

と、息子さん。

「じゃあ、1回を見たら行こう、ねっ!」

負けじとお母さん。

そんなお母さんの提案に納得したのかと思ったものの、数分後には、また「早く行こう」の合唱が始まる。

「分かった、じゃあ、メンバー聞いたら帰る」

どんどんお母さんの提案する、球場を出るまでが早くなっていく。

それからも男の子は、まだ〜?まだ〜?と言い続けていて、結局親子が球場を出たのは、1回の表と裏の攻撃が終わってからだった。

帰るときの男の子の顔は少しむくれていて、お母さんより先に球場を出ていってしまった。

でも、気持ちは分からなくない。

お母さんの
『メンバーを聞いたら』帰る
が、結局
『1回の表と裏の攻撃を見て』帰る

に変わってしまったのだから。

男の子がむくれるのも分かるし、何というか…赤の他人の私でも、両方の気持ちが理解できる。

そんな私の聞き耳攻防戦は終わったけれど、改めて、周りの会話って良くも悪くも良く聞こえるな〜と思った、そんな経験だった。(笑)


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