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読書記録2024①


久しぶりの。

全く読んでいなかったわけではなく、書かなかっただけとはいえ。
2023年の読書記録がまさかの②で終わるとは、、、
ただ、喫茶店で読むことが好きなのだが、最近喫茶店自体に行って無かった事に気づく。
居心地の良いところを見つけたいと思う今日この頃。


伊坂幸太郎「砂漠」

春。仙台市内の国立大学に入学した北村は宴会で鳥井、南と知り合う。その宴会に遅れて来た西嶋は大勢を前に臆することなく自己紹介と言う名の演説をする。その姿を無表情ながらも熱心に見つめる美女・東堂。北村の目を通した5人の春夏秋冬、4年間。期間限定の無軌道さのなかで起こる事件、関係の変化。そのオアシスのような時間は卒業と共に終わりを告げる。


これはずいぶん前に読了していたものの、読み返したくなり手に取った。


以前は気付かなかったが、この話は平成年間の半ばに出版されている。

執筆は、ちょうど自分が学生生活を送っていた頃か、少し前。本書の中では、携帯電話の所持率が当時の記憶より低く、イエ電を引いている学生がそれなりにいる設定だった。

伊坂作品は仙台が舞台であることが多い。
だから、いっとき仙台で過ごした身としては想像の羽が伸びやすいのだ。

遊びと卒業単位のために出席する授業とそうでない授業を周りから聞いて選ぶ。
ギャンブル各種に手を出し、学生生活初期からまわりに借金する。
休講を登校してから掲示板で知る。
同じクラスでも滅多に会わなくなる。
夏を過ぎると、高時給のバイト(だいたいコンパニオンかキャバ)で持ち物や雰囲気がガラッと変わる女の子。
男は、バイト代を貯めて免許を取り、中古の軽自動車を買う。
その車に5人で乗ったり(法令違反!)
仲良しグループから付き合い始めたり、
なかなかくっつかなくて周りが焦れる二人がいる。
気付くと周りが卒業後の進路を決めている一方で留年確定組がいる。


眩暈がするほどに、既視感。
そうだ、メンツも大学の名前も(偏差値も)違えど、これらを自分も通り過ぎて来た。

いま思えば、結構地味な学生時代だったけれど、一方で無軌道だった。
卒業後を見ているようで全く見えてなく、蜃気楼か?というくらい近付くほどに現実感が失せていた。
あの4年間は期間限定だと頭では分かっていたのに受け入れていなかった。体が動かなくなった。
だから、一見すると真面目なのに就職先を決めずに卒業という結果になった。
学年の8割が提出したとあるレポートでなかなかの高評価を得て代表で後輩学生相手に講釈を垂れておきながら、進路未定で卒業するとは大学も思わなかっただろう。
誰よりも自分が驚いた。

閑話休題。

本書の最後では、社会という砂漠に出たら4年間を共にした仲間との思い出は薄れ、いつしか忘れていく予感が語られる。
心理学用語でいうモラトリアム期が終わりを告げ、自らの手で足で人生を歩むうちに溢れていく。

卒業して20年弱、付き合いが続くのは少数になった。
そして思う。
友達を作るとは何て難しいことか。
仲良くなれそうとか、一緒に過ごすことに利益や見返りを求めない関係を会社で見出すことが無理ゲーにしか思えない、コミュニケーション下手な中年。


懐かしい思いと人生の真夏への羨望とが入り混じる読後感。
本書内で卒業式にて学長が述べた言葉に、今の年齢だからこそ首がもげる程にうなづいてしまうのだ。あぁ、最高に贅沢をしていたのだと。
いまの慎ましさからは想像もつかない。


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