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ワークショップによるインサイト創造

インサイトを創り上げるには1人より複数人数ですすめていくことをおすすめしています。

理由は明確で“正解がわからないから”になります。
すなわち、
「これはインサイト?」といった疑問について、複数の人による共感、合意形成がなされることで初めてインサイトと認識されることになります。言い換えると、インサイトはそれくらい脆く、一人で言い張っても、そのとおりだっ!と周囲が納得することはあまりありません。


ワークショップとは?

ワークショップとは?

インサイトは複数人数で、といいましたが「ワークショップで創り上げる」ことが適切です。

ご存知の方もいると思いますが、あらためてワークショップについて簡単に説明をしたいと思います。

ワークショップを私なりに定義すると

「参加者同士の対話を通じて、新たな意味を創造し、且つ、合意形成する時間・場」

となります。

対話(dialogue)は会話と混同しがちですが、意味合いとしては、“自分の考えを述べることを前提にしつつ、その主張や地位にこだわりをもたず、参加者同士がお互いの考えを尊重し、目的となるテーマに向かって深く探求すること”といった感じになります。

ワークショップはわかりにくい?

ワークショップを推奨すると、やんわりとネガティブ反応が返ってくる、あるあるケースとしては、

ケース①「社内でもやったことあるけど、その場は盛り上がっても、結局活用できるものはでないんだよね」
ケース②「うちのスタッフは大人しいから意見がでなそう」
ケース③「ブレストと同じでしょ?」 などなど。

要約すると出来ない理由には

「以前やったけどあまりよくなかった」
「話し合いで何かがうまれるイメージが出来ない」
といった2つに集約されます。
(スケジュール調整が難しいという意見もありますが、そこは調整の仕方で解決できるものとします)

人と人の対話により新しい意味を創り上げることなんてイメージがわかないという感覚やアイデアをだしても結局はただの思いつきだからビジネスで進める根拠が浅い、という懸念がでるのも仕方ないと思っています。

しかし、ワークショップを提案する時のテーマは、大概、「新しい」がつきます。つまり、今の社会に実装されていないものを生み出さなければいけないわけです。今の社会の延長戦上にあるものを創るのであれば環境分析をして、戦略を描くコンサルティングで概ね間違いはうまれません。そういう点で、導きたいゴール、創りたい新たな何か、が大きく異なります。不確実性が高いチャレンジングなテーマは、出来るだけ関係者の意見を取り込みながら創り上げたほうが、その後の推進のしやすさも断然に変わってきます。つまり参加者間で正解を創り上げるプロセスがワークショップなのです。

ワークショップをよりよいものにするには?

ワークショップは4つの構成要素に支えられています。

⓵参加者/②プログラム/③ファシリテーター/④空間

どれも大切ですが、あえていうなら⓵~から順番に大切だと感じています。

⓵参加者
 文字通りワークショップに参加する人のことですが、だれでもいいということではありません。

 時々参加に否定的な人がいます。「言われたから来た」と全くやる気がない人のことです。こういう人は参加しても意見もだしませんし、むしろいないほうがいいでしょう。やる気に溢れる必要はありませんし、少しくらい斜に構えていてもかまいませんが、参加する気持ちは持っていてほしいです。

企業からの依頼の場合は、概ねその部署のメンバーがメインとなり、他の部署にも声掛けをお願いしています。部署横断的に集まったほうが、普段あまり会話をしない人同士による化学反応が得られるので効果的です。

我々の場合は、それにプラスして一般生活者との共創もやります。
一般の人をいれてもあまり意見がでないのでは?という不安の声を聞くことがあるのですが、心配は無用です。
趣旨を説明した上で参加意欲がある人は、自分の意見をどんどんだす傾向があります。主婦の方や大学生でも全く問題ありません。むしろ業界内の主観にしばられない発想は貴重ともいえるでしょう。

②プログラム
ワークショップで参加者と同じくらい重要なものになります。
当然、ワークショップ当日までにはプログラムを作成し準備していきますが、どのようにワークショップの時間を通じてゴールまで到達するか?をかなり練りこみます。

限られた時間内にどのような問いかけを行い、どのような意見がでて、その意見をどのように次の問いに活かしていくか?といったことを積み重ね、終了時点でしっかりとゴールまで導くことができているか、を事前にイメージ出来るようにします。
大まかな流れや軸となるものは似ることもありますが基本的には毎回、テーマごとにプログラムを考え工夫をしていきます。

特にインサイト創りや商品コンセプト開発は一人一人の思いつきではなく、対話を通じることでよりよいものが生まれることのほうが圧倒的に多いといっても過言ではありません。

③ファシリテーター
ファシリテーターとはその名の通りファシリテーションをする人のことをいいますが、わかりやすく表現するなら会議やMTGなど人が複数人介在する場の効果を最大化するための存在という感じです。具体的には発言を促したり、誰かの代わりにわかりやすく伝えたり、対立が起きないようにしたりと、目的に到達するために参加者1人1人の考えを引き出し、まとめ、全体の合意形成までを実現させる役割となります。

④空間
ワークショップを実施する時は、いつも使っている会議室ではない別の場所で実施することを推奨しています。

生物は空間・環境に大きく影響をうけるため、新しい何かを創るのであれば、いつもいる場所ではない空間を利用したほうがいいでしょう。それでいて、リラックスできたり、童心にかえることができたりする場所だとなおいいですね。例えば、太陽の光が十分に入って見晴らしがいい開放感のあるスペースです。日常生活で利用する消費財などのコンセプトづくりがテーマならハウススタジオのリビングなどでもやります。
あとは、なかなか実施が難しいのですが、公園で実施するのもいいと思います。一度やってみたいですね。


ワークショップの空気づくりに大切なこと

概ね10名以上と多くの人が参加することがあるため、ワークショップはその空間のアクティブさと落ち着き・リラックスの両面維持できるよう気にかけます。そこにはいくつか気にかけるべき基本的なことがあります。

⓵非日常性
ワークショップで対話を進める時は、出来るだけ普段の仕事から意識を遠ざけることが必要です。なぜなら、仕事脳ではどうしてもロジックで考えてしまうクセがついているからです。ロジックで考える意見はワークショップには不要です。必要なのは参加者の共感が得られるストーリーになります。特に人間の行動というのは、矛盾がつきものでインサイトにも通じるポイントだからです。行動経済学では常識ですね。ロジックで考えてしまうと矛盾はNGとなるので、アイデアを出したり、対話をする際の弊害となってしまいます。

極端に言えば子供心をもって参加することがベストです。常識に縛られない発想を大人になってもやっていきたいものですね。

②民主主義
参加者には同じ会社、同じ部署の人が複数参加することがよくあります。普段は役職や先輩後輩といった関係性があるため、言いたいことも言えずにいることってよくあるみたいです。

折角、思いついた自身の頭にある発想を言えずにいるのは非常にもったいないことです。それがもしかしたらヒット商品につながるアイデアの可能性だってあるはずなのに。。
ですので、ワークショップ内ではそういった普段の関係性はなくします。といっても、そんな簡単にはいかないので、実施までにメンバー構成を練るプロセスをいれます。

上位職の人は外せばいい、ということでもなく、参加してもらうことでその後のアクションも進めやすくなるメリットもあるため、どのようなメンバーやチーム構成で実施するのがベストかを検討・準備することは実はワークショップ成功の大きな要因ともいえます。

③多様性
多様性やダイバーシティというワードが言われるようになって久しいですが、ワークショップ内のチーム構成においては極力、多様なメンバー構成を組んでいきます。例えば、同じ部署のメンバーはチーム各1名ずつ(開発、宣伝、営業、広報など別部署でメンバーを組む)、デモグラフィックの構成を分散させる、といったように分散をさせます。同じ会社でも部署によって知識や考えが結構異なります。このメンバー構成を考えることは民主主義とも共通しますが、出来る限りしっかり準備することが大切です。


ワークショップによるインサイト創造

ワークショップ内でインサイトを考え、創り上げる過程において、私たちは事前に調査した情報を活用することが多くなります。調査情報がなくても出来ますが、「想像」することが多く、インサイトを創る難易度は大きくあがってしまいます。

リサーチ結果をワークショップで活用しインサイトを創造していきます

調査情報の中でも定性的な情報が向いており、中でも訪問行動観察の情報が最も適しています。訪問観察調査については、長くなるのでまたあらためて詳細を書いていきますが、インタビュー内容や観察した行動部分、生活環境といった五感から得た情報となります。

インサイトに紐づきやすい内容は、発言と行動のちょっとした矛盾感、生活環境における事実要素から感じる違和感、といった1人の人間から得た複数の情報になります。そこから得られる気づきをメンバーで洞察していくことによってインサイトを創り上げていきます。

その際、インサイトとなる文言の前に、“本人は気づいてないけど”という言葉を付けてみると、それがまず潜在的なものかを確認することができます。ここで顕在化してるとなれば、それをインサイトというには疑問が残ることになります。

また、メンバー間で意見を出し合うことも重要です。その積み重ねによって共感を生み出しやすくなっていくからです。

通常、ワークショップに参加していない人が、そのインサイトの言葉だけパッと見ただけではピンときません。潜在的なものなので当然といえば当然です。そこですぐわかる!ってなったとしたら、インサイトとしては浅いかなと思います。あるいは、偶然ターゲットにドはまりしている人であればわかるかもしれません。

しっかりワークショップで対話したからこそ共感を得ることができるのです。ですので、そのプロセスからしっかり共有していくことが重要です。

以上、ワークショップについて、基本的な内容を記載しました。また、あらためてインサイト~商品コンセプト創造まで詳しく書いていきたいと思います。

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