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「ヴァロットン 黒と白」展 in 三菱一号館美術館

もう1か月以上たってしまったが、先日、東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催していた、『ヴァロットン 黒と白 展』に行ってきた。
行ったのがぎりぎりだったので、とっくに終了してしまったが、記録は残しておこう。

まずは概略。

19世紀末のパリで活躍したナビ派の画家フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、黒一色の革新的な木版画で名声を得ました。
三菱一号館美術館は、世界有数のヴァロットン版画コレクションを誇ります。約180点のコレクションを一挙初公開します。黒と白のみで作り出された世界に焦点をあて、未だ捉えきることができないヴァロットンの魅力に迫ります。

―パンフより抜粋

以前、この三菱一号館に、ヴァロットンの作品を見に行ったことがある。
黒と白だけで、いろいろな場面や感情まで表現できているのはすごい!し、抑えたユーモアのセンスもいい、と思った。
今回また行くほどではないかな、と思っていたが、「180点一挙公開」ということで、知らない作品もあるかも、というのと、「美しきシモネッタ展」とはしごするのに、適当な展覧会かな、と思い、行ってみることにした。


展示構成を簡単に書いておこう。

Ⅰ「外国人のナビ」ヴァロットン 木版画制作のはじまり

Ⅱ パリの観察者

スイスから出てきたヴァロットンにとって、華やかな時代を迎えたパリの街は観察の対象に事欠かなかったことでしょう。街路や公園などをそぞろ歩き、同時代の流行にも敏感に反応しています。とはいえ、もっとも画家の関心を引いたのは、「群集」や社会の暗部を露呈する事件であり、それらを皮肉やユーモアを込めて描き出しました。

ヴァロットンはリアルなパリの描写を通じて、斬新な視点とフレーミング、モティーフの単純化やダイナミックな人物表現など、木版画に独自の境地を切り開きます。初期の木版画が「線的」な表現を主としていたのに対し、次第に対象を黒い塊として捉える傾向が高まっていきました。 こうした木版画での探求は、平行して行われた絵画制作や雑誌挿絵の仕事にも影響を与えました。

―サイトより

このエリアは写真がとれたので、いくつか作品を。


Ⅲ ナビ派と同時代のパリの芸術活動

木版画によって時の人となったヴァロットンは、1893年初め、パリの若い前衛芸術家たちのグループ「ナビ派」に遅れて仲間入りしました。
この頃の版画作品は主題にナビ派との共通性が見られ、アール・ヌーヴォーの美学に近似した曲線による装飾性が特徴です。しかしながら、ボナール、ヴュイヤール、ルーセル、ドニらが主に多色刷りのリトグラフ(石版画)を手掛けたのに対して、ヴァロットンは黒一色の木版画にこだわり続けます。

―サイトより抜粋

Ⅳ アンティミテ:親密さと裏側の世界

ヴァロットンは、1894年頃から室内画を多く描きましたが、曖昧なトーンのない黒と白の木版画ほど、密室の緊張感や謎めいた空気をよく表すものはありませんでした。
連作〈楽器〉や〈怠惰〉を初めとした親密な室内情景において、対象は極限まで単純化され、黒地にわずかな白で暗示的に描かれる装飾的な調度品がアクセントとなっています。
私生活では1899年、大画廊ベルネーム=ジュヌの娘ガブリエル・ロドリーグ=アンリークと結婚し、友人関係にも変化が訪れました。1898年に限定30部で刊行された連作〈アンティミテ〉は、ヴァロットン版画の真骨頂を示す作品です。男女関係と結婚生活の不協和音が奏でられる10の場面では、大部分が黒い平塗りの面に侵食され、黒と白のコントラストを生むアラベスクの装飾的効果は最高潮に達しています。

―サイトより


『お金(アンティミテ Ⅴ)』

意味深で、好きだわ~。

特別展示:ヴァロットンとロートレック 女性たちへの眼差し

Ⅴ 空想と現実のはざま

結婚を機に経済状況が好転したヴァロットンは、絵画制作のみに打ち込むと決意する一方、時折、雑誌挿絵や愛書家たちのため、また自身の評価の確立のために版画に取り組みました。文学や詩との結びつきが契機となって、挿絵の世界で新たな表現を生み出していきました。神話や物語など空想的世界の描写においても画家特有の辛辣さが見て取れます。

第一次世界大戦の勃発は、再びヴァロットンを木版画制作へと駆り立てました。年齢制限によって兵士としての入隊こそ叶いませんでしたが、1917年には従軍画家として前線に赴き、執筆活動も活発に行いました。名声を得る一方で、様々な葛藤とともに健康状態の悪化にも苦しめられた後半生において、連作〈これが戦争だ!〉は悲劇的な現実への画家のマニフェストと言えるでしょう。

―サイトより

行ってみて、ほぼ予想通り、の感じではあった。
でも、なんとなくぼんやりとしていた、ヴァロットンの人生を一気に追えたのはよかった。
特に、晩年に従軍画家として戦地に赴いた、というのは初耳。
作品としては、連作<アンティミテ>が個人的には一番気に入った、というのは今回も変わらずである。

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