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朝の景色を一人のものに。

 遮光カーテンに遮られた部屋の電気をつける。外はまだ薄暗い。僕は、日課のための散歩のために早起きをしているのだ。ベッドから起き、身支度を始める。髭をそり、顔を洗い、服装を整える。部屋のカーテンを開け、まだ薄暗い外の光を部屋に届ける。僕はスマホに手を伸ばし、イヤフォンを耳に入れる。歩く時、好きな音楽を聴くためだ。 

 好きな音楽が始まる。家の前で軽い体操をすると歩き始める。歩き始めると僕の一時の自由が始まるような気がする。頬に触れる風が心地よい。家並みが朝焼けに反射している。川霧、まだ消えない外灯、僕はその中を歩く。自由の空間が広がる。知らない人、行き交う車、音楽で遮断された世界。僕はゆっくりと歩を進める。時折、息を深く吸う。朝の空気が肺に運ばれて来る。心地良い気分になる。

 朝の景色の印象は毎日違う。それは、晴れているとき、曇っているとき、湿度の関係、鳥が飛んでいるか、雨垂れ、草の傾き、気温、挙げたらきりのない変化が景色の変化をよんでいるのだろう。僕の一歩一歩はそれに反応するように進んでいく。

 橋に差し掛かったころだ。突然の雨に出会う。手に持っていたスマホをポケットに入れた。僕は、雨に打たれても自由に歩き始めた。一変した景色は街の全てを濡らした。朝の街は静かなのだろう。僕には音楽しか聞こえない。でも漂う空気に静かさを感じていた。日中の喧噪を忘れさせてくれる朝の散歩は、僕に充実した時間をくれる。 

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