1枚の絵をどれだけ見ていますか?
久しぶりに美術の話をしたい。
ビジネス視点での美術鑑賞とは言うものの、現時点で確立出来ているわけではない。
しかし、世界中の人が評価する名画から、人間の根源的な美的感覚が学べるのではないかと始めた取り組みは思わぬ方向へ進んでいる。
「見る」と「観る」
1枚の絵をどれだけ時間をかけて鑑賞しているだろうか?
私は恥ずかしながら、取り組みを始める前までは1枚の絵の鑑賞時間は長くて30秒ほどであった。
取り組み前までの最長記録の30秒の絵は、東山魁夷の絵であった。印象的な青が突き刺さった。
しかし、たったの30秒である。
30秒で分かった気になっているだけである。
私がそれまでやっていたのは絵を「見る」ことであって「観る」ことでは無かった。
「観る」ためには意識して能動的に目を使わなければならない。
仕事での観察眼との共通性
「あー、これってセブンイレブンのOFC時代にやっていた店舗チェックだな」と思った。意識して、店舗の細部まで目を向けて問題点や改善点を見つけ出すセブン時代の重要な仕事の一つだ。
これは、気付ける人と気付けない人との差が非常に出るから面白い。
必要なのは意識して「観よう」とすることだ。
なるべく多くのポイントに関心を持ち、場数をこなすことが必要だ。
① 同じポイントを何回も、違うお店で観ることにより違いが理解出来るようになる。
②違いが理解出来るようになったら、その違いが発生する理由を考えることにより、本質的な課題がわかるようになる。
私が仕事で経験していた観察眼は、繰り返し行うことで鍛えられた。
観察眼は、トレーニングで間違いなく向上する。
美術による観察眼トレーニング
そう思ったきっかけは、本屋さんで見つけた。
末永幸歩著「13歳からのアート思考」
プロローグの一文、
じっと動かない1枚の絵画を前にしてすら「自分なりの考え」をつくれない人が、激動する複雑な現実世界のなかで、果たしてなにかを生み出したりできるのでしょうか?
という言葉に強烈に煽られた。
タンポポの根っこ
アート思考という言葉の表現として、本書ではタンポポが例えで使われている。タンポポの花は作品であるが、表面からは見えないタンポポの根にこそ目を向けるべきだと書いてありハッとさせられた。
アートにとって本質的なのは、作品が生み出されるまでの過程のほうという言葉には上っ面しか見えなくなっていた自分の浅はかさを痛感した。
結局は本も絵画も同じこと
あ、これってショウペンハウエル先生の仰る良書との向き合い方と根本的には同じかもしれないと思う。
良いものは何回も何回も繰り返し目で触れるのである。
とはいえ、アート思考を向上させるためにはトレーニングが必要らしいので、次回以降は具体的な美術展での感想も交えながらビジネスに役に立つ美術鑑賞を紹介していきたい。