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【連載小説】『晴子』

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#連続小説

【連載小説】『晴子』3

【連載小説】『晴子』3

 あの人は、私の本当の名前を知らない。私が晴子だということを知らない。彼は私を麻美と呼ぶ。麻美という名前は、彼が名付けてくれたのだ。
 あの人と出会ったのは、先日例の変な男に絡まれたあのバーだった。季節は冬で、その日は風の強い日だった。日が出る時間も短く、昼で晴れていてもなぜか明るく感じない季節だった。
 仕事終わりに飲みに来ていた私は、いつものようにカウンターでカクテルを煽っていた。その日は何故

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【連載小説】『晴子』4

【連載小説】『晴子』4

 仕事を終えて、今日はまっすぐ帰ることにした。あの人に会う予定もなかったし、気に入っていたあの店も、例の件があって以来、行きづらくなっていた。梅雨は明けて、昼には入道雲も見えるようになっていた。蒸し暑く汗も噴き出して、肌がべたつく。
 家に着くと、ストッキングを脱ぎ捨てた。こんなもの、ずっと履いていられるわけがない。私は、後ろに束ねていた髪を雑にほどいて、衣服を剝ぎ取っていく。シャワーを浴びた。気

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【連載小説】『晴子』18

【連載小説】『晴子』18

 あの人と、久々に夜を共にすることができた。季節は出会った頃と同じような冬になっていた。今年の冬は本当に寒く、むき出しの皮膚が鋭利な何かで引っかかれるような寒さだった。これで雪が降らないのは驚きだ。昼夜を問わずベッドから出づらい。特に今の私の場合は、あの人の腕に抱かれているからなおさらだ。
「ねえ。」
 あの人に話しかける。お互いに重く、鈍いまどろみの中にいた。
「何?」
「聞きたいことがあるの。

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