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小説「熊雄」を連載させていただきます。15回ほどに亘って綴ってまいります。 前回の連載小説…
達雄の父は富山県の出身で、達雄は小さいころから父親に付いて、本州の山々に入っていた。そ…
熊雄が生まれて一年が経った。 彼の姿は依然として真っ黒な、しかも太い毛が体中に生えた…
熊雄、三歳になった。 依然として熊雄の体中の黒い毛は抜けなかった。このまま成長してし…
熊雄が七歳の時の春、父親の達雄は熊雄を連れて家の裏山にタケノコ(ネガマリダケ)採りに出…
日が高くなり、達雄は竹藪を抜け、見晴らしの良い場所に出て熊雄に声をかけた。 「熊雄! …
「いやに早く帰ってきたんでないべか」 二人の帰りが早いと見えて、母親のヨシは、嫌味ったらしく言った。 「それに、ほれ、二人でタケノコ ちょべっとしか採ってきてないべさ」 モッコを開けたヨシは呆れた顔をした。 二人は黙っているしかなかった。達雄は黙々と煙草に火を付けてフーと煙を口から吐き出した。 熊雄は、流しで手と顔を洗う。二人とも帰ってきて様子がいつもと違うとヨシは首をかしげた。 「父さん、何かあったのかえ」 「なにもねえ、今日は昼握り飯を喰って帰ってきた」 「熊雄、
熊雄が中学生になって、二年生の春も過ぎようとしたころ、家の前の波打ち際の岩場の水たまり…
熊雄がバスで一時間ほどかかる道立高校を卒業したのが、昭和四十六年の春、寒さが厳しい中で…
朝日動物園は旭山市が運営する動物園のため、熊雄は公務員採用試験を受けることにした。好き…
熊雄は、ヒグマ係のサブ要員として働いた。 餌づくり、餌やり、厩舎の掃除、そしてミーテ…
その日から一週間後の朝、動物園が大騒ぎになった。それはヒグマの檻の鍵が古くなり、それを…
マスコミの取材スタッフも園の正面玄関回りで屯していた。 その夜、熊雄は一睡もできなか…
このような事件があってから、朝日動物園が全国的に有名になった。 また、飼育員の間で園内の動物が生き生きと過ごせる工夫をしようと様々な提案があり、園長はそれを取り入れた。 ここ数年、入園者が落ち込んでいたが、これを契機にその後、入園者はもちろん園内の動物たちも楽しめる日本でも人気の動物園となっていったのである。 熊雄は一年間の臨時職員を解かれ、正式な飼育員として、朝日動物園で勤務することになった。 新たに担当する動物は、ペンギンたちであった。女性の飼育員と一緒に、