本気で解説してみた、「tan1°は有理数か?」

これは有名問題で、国立の大学入試に後期日程があった頃の
京都大学 で出題された問題である。

現在では「青チャート」に載ってるほどの有名問題だが
出題された当時、実際の答案は殆どが0点だったらしい。

じゃあ、そんなに難しいのか?というと、そうでもなくて
タネと仕掛けが分かれば高1でも解けれる簡単な問題である。

まず問題の解説に入るまえに
「そもそも有理数ってなんだったっけ?」から考えてみよう。

小学校に入学し、算数で一番最初に習うのが「整数」である。
「1から100まで数えれるかな?」
という世界。

そして足し算をならい、引き算をならい、掛け算をならい
割り算を学んだところで
一つの問題が出てくる。

計算式「5÷2」の値は?

となると
それまでの「整数」だけでは表すことができない。
そこで新しく「小数」という概念を学ぶ。

計算式「5÷2=2.5」

これで解決できた。

が、割り算を学んでいくことで
さらに新しい問題がでてくる。

計算式「1÷3」の値は?

となると、これを小数を用いて表そうとしても
値は「0.3333333333・・・・」(無限に続く)
となるので「整数」と「小数」だけでは表すことができない。
そこで新しく「分数」という概念を学ぶ。

計算式「1÷3」の値は「三分の一」という概念で
表すことにことにして解決したのである。

小学校までにならう「整数」、「小数」、「分数」を
まとめて「有理数」と呼ぶことにした。

これに加えて中学3年になると
「無理数」という概念をまなぶ。

無理数にも色々なタイプがあるんだけども
一番わかりやすいのは「ルート(根号)」の世界であろう。

掛け算の世界でいうと
2×2=4
3×3=9
4×4=16

など、「同じ数どうしを掛け算してあげると、その数になる」
という数が存在していて、これに着目して
「平方根」という概念を学ぶ。

だから「25の平方根は?」となると
正解は「5 と -5」となる。

この平方根という概念を学んだ結果、
一つ困った事が起こる。

たとえば
「同じ数どうしを掛け算すると丁度『3』になる数は?」
というのを考えたとき

概念としてそういう数が存在することは
なんとなくわかるのだけれども
そういう数が存在するとして、それを表そうとすると

これまで習ってきた「有理数」
「整数」、「小数」、「分数」だけで
表すことが、どうしてもできない。

「ムリっす」ということになる。

そこで「無理数(むりすう)」という概念を用い
「同じ数どうしで掛け算すると3になる数」を
「ルート3」とすることで表すことにした。

なので、3の平方根は?と訊かれたら
「ルート3 と マイナスルート3」が正解である。

これにより「有理数」では表すことのできない数を
「無理数」という概念を使うことで
解決したわけである。

長々と説明してきたが、
どうしてこれを解説したのか?というと

「有理数のみでは表すことのできない数が無理数」である以上、

有理数のみの加減乗除(足し算、引き算、掛け算、割り算)で
表された数が無理数になることは

「絶対にない」

ということを
読者の皆さんの記憶に留めておいて
欲しかったからである。

前置きが、だいぶ長くなった。
では、本題である問題の解説を始めよう。

タイトルの問題を解くのにあたって
必要な知識は「加法定理」と「背理法」
の2つだけ。

どちらも高校数学としては初歩的な知識である。

タンジェントの加法定理は


背理法とは
「・・・・と仮定する」と仮定を書き出すとこから始まって
そのまま論を進めていくと矛盾が生じることを指摘し
「これは前提と矛盾するので・・・・ではない」
というやり方で行う証明方法である。

直感的に「tan1°の値」は「無理数だろうな」と思うので

方針としては
背理法を使ってまず「tan1°は有理数と仮定する」
とした上で矛盾を指摘し
「ゆえにtan1°は無理数である」と結論づけて
証明する。

tan1°が有理数だったと仮定した場合
1°+1°=2° なので
加法定理によりtan2°も有理数となる。

(有理数のみの加減乗除であらわされてるから
有理数になるのは自明である)

このとき、同様に
tan4°
tan8°
tan16°
tan32°
も有理数となる。

(tan2°とtan32°が有理数になる、っていうのが欲しかった)

この場合
30°=32°-2°
なので、加法定理により
tan30° は有理数となる。

ところが



上記の図の直角三角形
(3辺の比が1:2:ルート3)
において

定義上 tan30°=ルート3分の1 となり
矛盾する。

よってtan1°は無理数である。
(証明終)

大学入試、京大ならば
ルート3が無理数であることは
自明扱いで良いと思うのだけども

必要ならば、あわせて
ルート3が無理数であることの証明も
しておけば完璧であるが
(背理法の良い練習にもなる)
ここでは割愛させていただく。

いかがだっただろうか?
数学というよりは
国語(主に論理力)
の問題だったと思う。

楽しんでもらえたら幸いだ。


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