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おりこうさん

土曜日、洋酒チョコレートを6箱買った。
ロッテが冬限定で発売している、ラミー、バッカス、マロングラッセを2箱ずつ。
もともと酒は飲める。
酒入りチョコレートは大好きだ。
その6箱も、2日くらいで食い上げてしまうだろう、そう思っていた。
現に、買って帰ってきてすぐに、マロングラッセ1箱を食べきった。
けれど、日曜日、わたしは洋酒チョコレートを食べようとはしなかった。
健康面を考え、いっぺんに食べてしまうことを控えた。
おりこうさんになったということだろう。
今日は月曜日。
なんだかとても疲れていた。
1日元気が出ず、作業所でも仕事にならなかった。
帰ったら、洋酒チョコレート食べよう。
大好きな洋酒チョコレートを食べて、元気を出そう。
そう考えながら帰ってきた。
部屋着に着替え、コーヒーを入れて冷蔵庫からラミーを取り出した。
ぱくりと食いついた。
甘い。
そして、中のラムレーズンは、とても洋酒がきいていた。
3分の1を食べた。
そして、次の3分の1を開封した。
またぱくりと食いつく。
口の中でチョコレートが溶けていく。
洋酒の味が口の中に広がる。
けれど、なぜだろう。
あ、もういいや、と思った。
残りの3分の1は、冷蔵庫に戻した。
ラムレーズンに染み込んだ洋酒が、暴力的に思えた。
クラクラするほどきつかった。
こんなことは、今までなかった。

わたしは気づいてしまった。
酒に弱くなっている。
3年間、ほとんど酒を飲んでいない、そのせいだろうか。
わたしはおりこうさんになりすぎている。
かつて、朝から焼酎を飲み、昼間から精神科の患者仲間の部屋で飲み会に参加していたわたしが、ほんのちょっぴりの洋酒チョコレートで、まいっている。
もはや酒が嫌いにすらなりかけている。

人生が破綻していた、あの頃が恋しいわけではない。
いきがってガンガン飲んでみせていた、若さが恋しいわけでもない。
けれど、今のわたしはおりこうさんになりきってしまった。
そのことが、ほんのちょっぴり寂しい。






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