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 ただ、涙が出た。悔しくて、悲しくて、やるせなくて…。
 私が泣いたら、君も泣き出して、一緒になって泣いた。
 互いに称え合うように、慰め合うように、抱き合った。
 君の腕の中は暖かくて、私を優しく包んでくれた。
 だからこそ、余計に涙が出てきた。
 私の目から流れる雫は、君の目から溢れる雫は、
 止まることを知らないようだった。

 君に涙の訳を尋ねたら、私が泣いているからだと言う。
 その言葉を聞いた瞬間、また、涙が流れ出した。
 君の優しさが眩しくて、君の優しさが嬉しくて、君の優しさが苦して…。

 君は私に問う。
 どうして泣いているのか、と。
 私は答える。
 君の代わりに泣いているんだよ、と。

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