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税金雑学シリーズ〜所得税〜相続で取得したマイホームの買い替え

 今日は相続で取得したマイホームの買い替えの際の税務上の留意点についてです。若干ピンポイントな論点のため、多くの方が直面するような事柄ではないですが、対策を間違えてしまうと税額が倍増してしまうがおそれのあるところなので、頭の片隅にでも入れておいていただければと思います。

マイホームを売った場合の税金

 マイホームを売った際の売却益は「譲渡所得」に区分され、他の給与所得や事業所得等とは分離した枠で5年以下所有のマイホームの売却の場合には39.63%(内住民税9%)、5年超所有の場合には20.315%(内住民税5%)が一律課税されます。

 そしてこの税率を乗じる元となる売却益をどのように計算するかというと、以下のとおりです。
  収入金額−(取得費+譲渡費用)

 今回は通常の売買契約をもとに考えるため、収入金額はそのまま売却収入、取得費は誰かから購入したものならその購入価額、譲渡費用は売却を依頼した仲介会社への手数料や契約書に貼る印紙代等が該当します。

相続で取得した不動産の取得費は被相続人の購入価額

 今回のように相続で取得した不動産の取得費をどのように考えるかというと、相続人がその不動産を引き続き保有していたものとみなして、原則被相続人の取得費を引き継ぐことになります。
 とはいえ、被相続人の購入価額が分かる書類が必ずしも残っているとも限りません。「引越しの時に間違えてい捨てちゃった!」とかよくある話です。

 そういった、当初の取得価額が分からない場合には「概算取得費」として、売却収入の5%を取得費として計算できるようになっています。

相続取得不動産の売却益はなかなかデカい!!

 近年不動産相場は右肩上がりで、郊外で10年前に購入したマンションを売却しても売却益が出るケースもちらほらあるようです。
 しかし、私達一般庶民が売買する不動産の価額はパワーカップルが購入するものであっても1億円以内ではおさまるレベルでしょうから、仮に購入価格の3割増で売却したことによって売却益がたとしても、【居住用財産の3000万円特別控除】という最強の税制があることから、結果課税されないこととなるためあまり心配する必要はありません(この恩恵を受けるための確定申告は必要です!)。

 一方、相続によって取得した不動産については、先ほどの計算例のとおり被相続人の取得費を引き継ぐため、自分の親が50年程前にその時の物価水準で購入した不動産の取得費がいくらかみてみると恐ろしく安い金額なのではないでしょうか?

 ちなみに、JR中央線高円寺駅徒歩6分の住宅地の昭和50年の公示地価地価が平米146,000円ですが、令和5年は685,000円(同一地がなかったので徒歩距離が類似の対象地を選定)と、軽く5倍は上がっています。

 また、その時の売買契約書等をなくしてしまっていたら、売却価額の5%しか取得費にならない、逆に言えば売却収入の95%が売却益になってしまうということになります。

居住用財産の買い替え特例で先延ばし・・・

今回、この高円寺の戸建付きの土地40坪を相続し、マンションへ買い替えをしようとすることを考えてみると、以下のとおり所得税が13,902,500円もかかります!

685,000円×132平米−(146,000円×132平米+2,712,600円)=68,435,400円
68,435,000円×20.315%=13,902,500円

これではマンションへの買い替え計画にも影響が出るのではないでしょうか。。。

そこで、所得税ではこの課税をひとまず先延ばしにして、買い替えができるようにする、【特定居住用財産の買い換え特例】という制度が用意されています。

 この制度を簡単にいうと、10年以上所有かつ居住している自己の住居を1億円以下で売却し、その売却資金以上の金額の住居に買い替えることで、上記の税額がマルマル先延ばしになります。ではこの「先延ばし」とは何かというと、次回今回買い替えた住居を売却する際には、その取得費を今回売却した住居の取得価額で計算するということです。
 すなわち、買い替えなければそのまま課税されないことになりますので、先延ばしといっても10年後に必ず課税されるというようなものではないので計画的に利用すれば利用価値は高い制度です。

 ただし、注意しなければいけない点は、この特例を利用すると、取得を新しい物件が引き継ぐのですが、取得はあくまで実際に購入した日になるため、この特例取得後5年以内に何らかの事情(離婚なんかが多いでしょうかね・・・)で売却する場合には、短期譲渡所得の税率が課されてしまうため、冒頭で記載したとおり税率は約倍になってしまいますのでご注意ください!

 ご注意くださいといっても人生の行く末程コントロールが難しいことはないだろうと私も深く実感しておりますが・・・笑

最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^


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