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会社を複数持つ節税が有効な2パターン

 会社の経営をされている方なら一度は考えたことがあるかもしれませんが、今日は既存の事業を複数の会社で行うことによる節税についてご紹介したいと思います。

 そもそも何故会社を複数持つと節税になるのでしょうか??

会社を複数持つことで節税になる理由



①法人税軽減税率の適用可能額が広がる
⇨法人税の税率は原則23.2%ですが、中小企業は所得が800万円以下の部分については15%の軽減税率が適用されるため、会社の数が増えればその数に応じてこの800万円以下の軽減税率の枠が広がります。

②事業税の軽減税率の適用可能額が広がる
⇨事業税の税率は、原則7%ですが、資本金が1000万未満かつ3以上の都道府県に事務所等を有していない法人の場合は、所得金額400万円以下の部分が3.5%、400万円超800万円以下の部分が5.3%、という軽減税率が適用されるため、この要件にあてまる会社であれば、法人税と同様に所得が800万円以下の部分の軽減税率の枠が広がります。

③交際費の損金算入限度額が広がる
⇨交際費等は現在原則接待飲食費の1/2しか損金算入できないのですが、中小企業については接待飲食費に限らず年間800万円までは全額損金算入可能な枠があります。そのため、会社の数が増えれば(事業関係者の配分次第ですが)その数に応じてこの損金算入可能な枠が広がります。

③少額減価償却資産の一時償却の限度額が広がる
⇨中小企業が取得した30万円未満の資産については、年間合計300万円まで全額取得時の損金に算入できる特例があるため、会社の数が増えればその数に応じてこの300万円の枠が広がります。ただし、こちらは基本的に単なる課税の繰延べなので、使い方次第では節税が可能なものです。

④消費税の免税もしくは2割特例の恩恵を受けられる
⇨新たに設立した法人は、原則最初の2年間消費税の納税義務がないため、同じ商売をしていても、新たに設立した会社で行うと最初の2年間は消費税が課税されないこととなります(ただし1年目の最初の半年の売り上げと給与の支給額がいずれも1000万円を超える場合は2年目から納税義務あり)。
 もっとも、インボイス制度が開始したことによって多くの事業者は取引先の意向もあり設立1期目から消費税の納税義務者となることを選択するのではないかと思うので、現状においてはこの点が実施的にメリットとは言えなくなっています。
 とはいえ、1期目から消費税の納税を選択した場合でも、売上にかかる消費税額の2割を納税すれば良いという「2割特例」を適用できるため、業種によっては最初の2年間は結果的に消費税額を軽減することが可能です。

※中小企業と言っている部分は正確には中小法人等という呼称で資本金の額が1億円以下で大法人による完全支配関係がない会社をいいます(③については中小企業者等のことを言っているため正確には少し対象が異なります)

⑤事業承継時に株価評価の軽減効果が見込める
 こちらは超長期的に見た際の話にはなりますが、将来次世代へ会社の株式を承継する際に、片方の会社を100%子会社としておくことで、純資産価額方式による会社の株価算定において、会社の価値増加分に対して37%の評価減ができる場合があるという効果があります(説明が膨大になってしまうため詳細は割愛します)。


 理由がわかれば大体想像はついてしまうかと思いますが、以下これを踏まえて複数の会社を設立して事業を行った方が良いパターンを2つ挙げてみたいと思います。

パターン1 毎年の所得が800万円を超える法人

 これは、先ほど挙げた①、②のとおり800万円を超えると税率が変わってくるためですが、具体的にいくらくらいになればその効果が出てくるのかというと、最低限概ね毎年コンスタントに所得が1400万円以上出る見込みがある会社と私は考えます。
 以下、1社で行なっている現事業を2社で行ない、幸運にもちょうど所得が半分づつ(1400万円が700万円づつ)になるというような非常に簡単なシュミレーションによる比較です。

❶1社の場合
 法人税      2,592,000円(地方法人税を除く)
 事業税        772,000円
 特別法人事業税     231,600円
 合計       3,595,600円

❷2社の場合(2社合計)
 法人税      2,100,000円(地方法人税を除く)
 事業税         598,000円
 特別法人事業税   179,400円
 合計       2,877,400円

 以上のような前提であれば1社で申告するよりも2社で行った方が約700,000円節税になります。
 
 一見、「税率差を利用するんだから毎期900万くらいの所得でも節税になるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、目安として1,400万円くらいとお伝えした理由としては、2社にすることによる追加コストがあるためです。

 主な追加コストとしては、会社が赤字でも黒字でもかかる地方税の均等割と言われる税金で、最低でも年間7万円の負担が増加します。
 
 さらにもう一点忘れてはならないものが、新たな税理士報酬が生じるということです笑 会社が異なるということは当然日々の仕訳も作成する申告書も全て別個なので、税理士報酬が倍増することになります。

 税理士報酬がいくらになるかでこの試算は大分変わりますが(上記例では月額3万円決算申告料20万円という小規模なケースでの試算)、税金だけでなくトータルのコストを考えた上で複数の会社で行うかどうか検討をする必要があります。

パターン2 毎年交際費等の支出額が1300万円を超える法人

 建設業や不動産業のように、交際費の支出額が多くなる傾向が強い業種ですと、売上の規模が1億に届かなくても、交際費等の損金算入限度額800万円を超えてしまうような会社も多々あります。
 そのような会社において、交際費の支出額がちょうど半分になるように事業を2社で行うことができたとしたらの仮定の下、以下のとおり節税額を算出してみると、年間1300万円支出する場合だと、約75万円法人税が節税になるため、2社にすることによる均等割7万円の増加、税理士報酬の増加を加味してもお得になるのではないかという試算です。

❶1社の場合
 所得金額 800万円(交際費等の損金不算入額500万円含む)
 法人税額 1,200,000円

❷2社の場合(2社合計)
 所得金額 300万円(各法人の交際費等は650万円で全額損金算入)
 法人税額 450,000円

 このケースは軽減税率の範囲内でおさまっていることを前提にしていますので、交際費等の損金不算入額が生じることで所得が800万円を超えてしまうような場合なら更に節税効果は高くなります。

複数の会社で事業を行うか否かの判断は長期的な視点で検討を

 会社を複数持つことでの節税効果はいくつかありますが、基本的にパターン1、2のように毎期コンスタントに見込まれるかどうかといった視点で判断していくことが大切なため、一時的に消費税が軽減される、一時償却で所得を軽減できるという点は副次的な効果としてみておけば良いかと思います。

 ただし、ただ会社を二つつくれば良いというわけではなく、しっかりと複数の会社で事業を行う合理的な理由と区分を行うことが何よりも大前提として必要です。ただ節税をしたいからという理由だけで2社作っていい加減に売上を配分してしまうと、「実際1社の売上ですね」と税務署から更正されてしまうこともあり得ます。また、2社作った場合の会社の所有関係をどうするかといった点一つにとっても将来的な効果が変わってくるため検討が必要です。

 なお、今回のパターン1、2が複合的であれば、もっと所得が低くても、交際費等の支出額が少なくても、2社にする価値は高くなるため、それぞれの会社で個別に検討を要します。

 このあたりのかなり踏み込んだプランニングの仕方については後々有料記事で掲載してみたいと思いますので、気になる方は是非ご覧いただければと思います。

 
 最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^




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