自閉症(発達障害)の理解③

これまでに2回にわたって取り上げてきたのは、発達障害や自閉症についての理解を深め、それらの子どもたちがどのように感じ、学ぶのかについての話でした。

今回は、自閉症の支援を学ぶ人たちを対象としたものではなく、自閉症の子どもを育てているご家族向けのものです。
今回の目的は、ご自身の子どもとの関わり方を学び、我が子をより深く理解することです。

親として自閉症について学ぶことは重要ですが、その学びの先にあるのは専門家になることではなく、得た知識を我が子の理解と育児に生かすことです。
今回は、これまでの自閉症に関する知識を、具体的に我が子に置き換えて、子どもを理解する方法について話を進めていきたいと思います。
それは、自閉症の子どもたちに対する適切な支援をする前に、まず我が子を正しく理解することから始まります。

我が子に対する理解を深める過程では、子どもが親とは別の人格を持っていることを認識することが必要です。
子どもは成長に伴い、趣味や好み、できることが変わっていくため、ある時期に理解できたと思っていたことが、時が経つにつれて理解しづらくなることもあります。
また、子どもたちが自閉症であるために、彼らの行動やコミュニケーションの困難さを理解することは、親にとっても、教育関係者にとっても容易ではありません。
しかし、こうした理解のプロセスを通じて、子どもたちの真の姿を理解し、適切な支援をすることができるようになることを目指しています。

今回は、子どもたちの行動や感じ方、学習スタイルの背後にある感情や思考を理解し、それを子どもたちの育成に生かすためのポイントについて、具体的な話をしていきます。
特に、自閉症の子どもたちの行動は、表面的な行動だけではなく、その背景にある感情や思考を理解することが重要です。
また、子どもたちの状況やニーズに応じて、支援者や教育関係者と協力しながら、適切な支援を行うための方法についても考えていきたいと思います。

例えば、子供がペットボトルのふたを開けるという簡単な作業においても、子供によって異なる対応が必要です。
ふたの開け方がわからない子には、正しい開け方を教える必要があります。
例えば、お母さんが「こうやって回して開けるんだよ」と教えることで、子供もその方法を覚えます。一方で、開け方は分かっているけど、まだ力がうまく入れられない子には、徐々に力を入れる方法を教える必要があります。
これらの例は、見た目の結果が同じ「開けられなかった」としても、その背景にある理由は全く異なるということを示しています。

子どもの行動や反応は多様で、その一つ一つには子どもの成長や学習過程において重要な意味があります。
例えば、ペットボトルのふたを開けた後に、再度締めるという行動を取る子もいます。
これは、子どもが見本として示された行動を真似しているためで、どこまでが見本で、どこからが実際に行うべき作業なのかを理解していないことが原因です。
このような場合、子どもに対する指導方法を変えることで、より効果的な学習が期待できます。

子どもの行動を観察する際には、その行動がなぜ起こるのか、どのようなプロセスを経て行われているのかを注意深く分析することが重要です。
例えば、お皿洗いをするプロセスを細かく分析することで、子どもがどの段階で困っているのか、どの部分が上手くいっているのかを把握できます。
このように、一つ一つの行動を詳細に観察し、子どもがどのように感じ、反応しているのかを理解することが、子どもへの適切な支援につながります。

子どもの行動や学習に対する理解を深めるためには、子どもの失敗や困難を負の経験として捉えるのではなく、学習の機会と捉え、それをどのようにサポートし、導いていくかを考えることが重要です。

子どもは、失敗を通じて学び、成長します。親や教育者は、その過程をサポートし、子どもが自信を持って新たな挑戦ができるような環境を整えることが求められます。

療育において、子どもたちの支援目標を立てる際には、子どもが「できかけていること」に注目します。
療育では、この「できかけている」部分、つまり、まだ完全ではないが成長が見込める部分を△(芽生え)と表現し、それを目標に設定します。療育では、その△の部分にどのように取り組むか、また家庭でどのようにサポートするかについて話し合います。

しかし、家庭生活においては、△の部分だけでなく、すでにできていること、つまり「〇」の部分も非常に重要です。

療育では数時間で取り組むことができるかもしれませんが、家庭生活は朝から晩まで続きます。
一日中、△のことばかりに取り組んでいると、それは大変な負担になります。

ですから、家庭生活では、すでにできていることを基盤にしながら、そこに△のことを少し取り入れるバランスが大切です。
家族は、子どもがすでにできていることを認識し、それを生活に上手く取り入れることで、自然と「できた!」という喜びの瞬間を増やしながら、その中で少しずつ新しい挑戦を促していくのです。

特に、療育に熱心な家族ほど、△の部分に目を向けがちですが、それを生活に入れすぎると、家庭生活が負担に感じられることがあります。

家庭では、すでにできている「〇」の部分に焦点を当てて、子どもが自分でできることを理解し、その上で療育の先生と一緒に話し合いながら、△の部分にも少しずつ取り組んでいくことが大切です。

家庭生活では、子どもがすでにできていることを見守り、認める機会を持つことが重要です。
できていることを手伝わずに見守り、その上で子どもができることの中からお手伝いを選ぶことで、子どもは自信を持って新しい挑戦に取り組むことができます。
一方で、できないことを無理にお手伝いにすると、子どもにとっては負担になりかねません。

日常生活においては、子どもが自分でできることを中心にしながら、時々家族で新しい挑戦をすることが重要です。
できることを認識し、それを基にして日々の生活を進めていくことで、子どもの自立をサポートしていくのです。
そして、それを当たり前とせず、適切に認め、褒めることで、子どもは自分の成長を実感し、次のステップへと進んでいくことができます。

次回は、この好ましい行動を引き出すために、どのようにメッセージを伝えたらよいかについてお話しします。





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