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自分の人生

自分の人生のために生きたいとはじめて思うようになった。今まで友人の結婚、出産の話を聞いてもおめでとうとは思えてもどこか他人事。自分の人生には関係ないものなのだと感じていた。
9月。やっとの思いで取れた夏期休暇。それまでは仕事のことが頭から離れずもやもやしたまま休暇を取り、気がついたら過ぎ去っていることが多かった。しかし今年は違った。社会人5年目にしてやっとメンタル的にもゆっくり過ごせそうな休暇だった。北海道旅行を計画した。社会人1年目ではじめて訪れたその土地には日本ではない異国な雰囲気があり、行くならここと決めていた。新千歳空港から北海道の地に降り立ち、支笏湖、洞爺湖、小樽、余市、釧路と回っていった。
釧路には大学時代のおんな友達がいる。北海道に行くとなると彼女のことをいつも思い出す。久しぶりに声をかける。何年振りだろうか。前回の北海道旅行振りだった。札幌から小樽周辺まで電車で移動して観光案内してもらった。4年も前の話だ。まだ社会人のなりたて会話なんて仕事どう?社会人どう?程度の浅いものだった気がする。正直あまり覚えてない。
大学時代では同じ研究室に所属していてそこそこの頻度でLINEするような仲だった。落ち着いているが愛嬌があって誰の懐にもひょいっと入ってくるような人だなという印象だった。研究室の仲間で飲みに行ったり、大学の体育館を貸し切ってスポーツしたり、アルバイト先の飲食店に行ったり、原宿へ買い物に付き合ったりもした。もちろん研究室での作業中も雑談相手だった。
そのとき自分は元カノと別れたてであっため彼女との会話がとても心地よかった。今思うと好意があったかもしれない友達という位置付けだろうか。
ただ当時彼女には彼氏がいたし、就職先は彼女の地元北海道だった。何のアクションもとらないまま卒業した。ただの友達だった。
久しぶりのLINE。彼女は快く承諾してくれて、釧路で久しぶりに飲むことになった。何を期待しているわけでもないがとても心が踊っていた。仕事ばかりの自分が久しぶりに感じた感情はとても懐かしく、完全に忘れ去っていた感覚だった。
小樽から5時間ほど車を走らせ釧路にたどり着いた。選んでくれたお店の前に集合した。久しぶりの彼女は相変わらずの愛嬌と明るさだった。店内は落ち着いていて、暗めの照明は古民家のような雰囲気、料理は地のものを使った新鮮なものばかり。営業でよく使うお店のようだ。思い出話に花を咲かせていると、彼女は突然『結婚したんだ』と左手薬指の指輪を見せた。あまりの突然さに変なテンションの上げ方で『おめでとう!』と返した。北海道と東京、結婚していなくても、彼氏がいなくても付き合うことなどできないと分かってはいたけれど何か気持ちが落ちていくのがわかった。
新しい生活を語る彼女の姿、自分の目には少し不安そうに映った。何か『好き』だけではなく、決心が必要なんだと訴えているようにも感じた。
・新しい家族との関わり方
・出来るのに手伝ってもらえないイライラ
・結婚しているのに仕事の関係で一緒にいれない状況
・八方美人な旦那さんへの心配
・家庭に入ると自立できなくなってしまうという不安

ある会話ではこういう話題はセンシティブで周りに話せていなかったからスッキリしたとも言ってもらえた。
なにか彼女の悩みに寄り添えた気がしてそういう関係性が築けていたことが誇らしかった。それと同時に会っていない4年間で自分の人生を設計していた彼女がかっこよく思えた。
話せていない4年間に対するたったの3時間はほんとうに一瞬で過ぎ去ってしまった。でもどうでもいいと思っていた自分の人生をしっかり設計して生きていきたいと思える力がその3時間に詰まっていた。このことは忘れられたらそれは自分で設計した人生が彼女のものに追い付いた証だと思う。

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