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PALWORLDはゲーム業界に何をもたらすのか。~任天堂の戦略の変更と、ゲームの著作権の未来~


PALWORLD 600万本販売

#パルワールド 、リリースから4日で売上本数600万本達成しました!!

このニュースは衝撃のニュースであった。年~数年に一度、ゲーム業界にはゲーム業界の在り方を変えるニュースというのがある。例えば近年においては、次のようなニュースがある

2020年:原神の発売とヒット
2021年:Epic Game 対 Apple訴訟
2022年:Acitivisionの買収

これらはゲーム業界に大きな変化をもたらした。『原神の発売』は、中国ゲーム会社の国際的な実力を証明した。『Epic Game 対 Apple訴訟』は、ディベロッパーからプラットフォーマーの反逆そのものであり、結局Appleは決済手段を独占できなくなった。Activisionの買収は、ハードで独占しソフトで儲けるというコンソールの必勝法を揺らがせ、コンソール業界にハードを独占する以外のプラットフォーマーの在り方を改めて示した。
こういった、ゲーム業界の在り方を変えるニュースというのが1年~数年に一度存在する。「パルワールドの600万本販売」もそういったニュースであると考える。。


Nintendo タイトルはSwitch独占であるべきなのか

それでは、なぜこれが非常に大きいニュースであるのか、著作権もそうであるが、その本質は、NintendoタイトルはSwitch独占であるべきなのかという議論の再燃である。
Nintendoの収益戦略は、非常に強力なIPを持つ任天堂タイトルを、任天堂のハードで独占販売するという、ソフトとハードの両輪を目指すものである。この戦略は成功しており、任天堂の決算を見ても、ハード/ソフト共に莫大な売上を上げていることが分かる。

ただ、一方でこの論理には、隠された議論がある。任天堂がハードを限定せずにSwitch以外にも販売した方がより収益ががあるのではないかという議論である。SIEですら独占をあきらめる時代であり、実は、原神がヒットした時にも起こっている。Switchだけではなく、携帯・PCにおいても販売したらもっと収益をあげられたのではないか?ということである。もちろんこれは仮設であり、リスクが伴う行動でもあるので、行動に移されてはいない。

しかし、そんな中、次のことが明らかになってしまった。

・任天堂IPは、強力な浸透力を持っており、コピーですら莫大な利益を得られる。
・任天堂の存在しないアメリカ/中国(特に)のsteamユーザを押さえれば、莫大な利益が得られる。
・任天堂の想像以上に、アメリカ・中国は著作権に対する意識が希薄

開発費10億円規模で、数年で開発、数年前まで数人しかいない会社が、現時点で推測でも150億(値段×本数×70%)近くの収益をあげたのである。もし、仮に今回の件が問題視されないとしたら、もっと開発力と予算のあるゲーム会社が真似しない理由があるだろうか?

Automatonの記事で、ポケットペアの社長溝部拓郎氏は、ユーザの比率はsteamユーザの分布と同じではないかと予測している。実は、これは、USと中国が二大巨頭であることを示している。実際、Steamの言語比率や、パルワールドのレビューの言語を見れば、英語と繁体・簡体でかなりの量を占めるということが分かる。(本当に余裕とお金がある人は、GSDやNPDなどの専門機関の数値を洗うという方法もある)また、中国は国策の関係上、PC/携帯以外でのユーザ獲得が難しいというのもある。

つまり、Switchでの販売独占を放棄して、Steamに参入する以外の方法で、任天堂が他の参入を防ぐことは難しく、これは人によって(特に株主にとって)は機会損失と捉えられても仕方ないため、株主からの突き上げがあり得る状態であるといえる。

なお、更に状況が悪いのは、Switchが次世代機への交代を迎えている時期であることである。当然、次世代のSwitchの発表は既存戦略の継続を意味するが、パルワールドの600万本販売は既存戦略への疑問符を投げかける可能性がある。

結局、任天堂はどうするか?

結論から延べれば、法廷闘争になると思われる。パルワールドは売れすぎてしまい、任天堂の戦略に影響を与えるレベルになってしまったといえる。

過去のゲーム関係の著作権・特許関係から関係を考えると、ゲームのシステムや画面表示等については、著作物の保護要素に該当しない、と判断される可能性も否定できない。よって、著作権を理由にした裁判は難航する可能性が高いし、そんなことは百戦錬磨の任天堂法務部が理解していないわけがない。

よって、著作権をベースにではなく、他の理由を持って裁判を行う可能性も十分に考えられる。

200万本くらいであれば、ポケモン・任天堂ファンから反感を買えど、せいぜい話し合いくらいで済んだと思われるし、溝口氏も上記のようなゲーム著作権事情を踏まえたうえで、ポケモンとの類似性を感じつつも押し通せると考えたのかもしれない。実際、ゲーム産業においてパクリ・パクられは常でもあるからだ。

ただ、本作は発売4日で600万販売であり2024年の最大の販売本数タイトルになってもおかしくないレベルであり、任天堂にとって影響力が多き過ぎるといえる。そのため、パルワールドがどうではなく、①既存の戦略の正当性を主張するため、②資本があるゲームパブリッシャーけん制しないといけないため、任天堂は動かざるを得ないと思われる。

場合によっては、ゲームの著作権の既存の価値観を変えるほどの闘争を広げる可能性はある。また、任天堂は自社の管理しないIPの活用(eSportsや同人、MOD、エミュレータ)に対して、かなり否定的な立場であるがそれがより強化される可能性は多いに高く、eSportsなどにおいて影響が出る可能性も多いにある。

今後の動向に注視したい。

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