思いもよらないタイミングでとてつもない音楽に出会ってしまうことがある。
最近ずっと寝付けない。
もともと寝付きが悪くて仕方の無い人間だが、迫り来る卒業論文提出日に対する焦りや、そんな状況にも関わらず計画的に執筆が進められない自分への苛立ちも相まって、余計に眠れない。
あまりにも眠れないと、「この時間で何か出来たんじゃないか？」などという考えが頭を巡って更に寝付けないのだ。
最近はそんなとき、逆効果だと分かっていながらもイヤホンで音楽を聴いてしまう。
もちろん激しい音楽は聴かない。こんなときは決まって青葉市子の歌う「羊のアンソニー」を聴くことにしている。
歌詞も眠れぬ夜にぴったりだ。この曲が入ったアルバム『qp』を頭から聴いているうちに寝落ちしてしまえれば言うことなし。
一昨日はCleo Solの『Mother』（2021）を聴いていたら寝落ちすることが出来た。朝起きたとき、5曲目以降の記憶がなかったが、履歴を見ると確かに再生されていた。
（寝落ちしたと書いているが、決して駄作ではない。間違いなく今年を代表するレベルの傑作アルバムだ）
そういえば2年くらい前、眠れそうな曲を集めたプレイリストを作ったこともある。今見てみると首を傾げるような選曲もあるが、ようやく本格的に洋楽を聴き始めたばかりだったのでこんなものだろう。
他にもスフィアン・スティーブンスの『Carrie & Lowell』（2019）や、ジョニ・ミッチェルの『Blue』（1971）など、永久に語り継がれるようなフォークの大名盤を聴いて寝落ちしたり、逆に静かに盛り上がってしまったりする。
昨晩は何となく目に付いた、アコースティックの名曲を100曲集めたこのコンピ盤（2022年2月22日追記；残念ながらこのコンピ盤は現在内容が変更されており、本記事の楽曲は削除されている）を聴くことにした。
昨晩と言っても深夜3時半で、朝に近い。
3曲目にデュア・リパがいるのが面白いが、ちょっと不安なのでシャッフル再生することにした。
1曲目はジョニ・ミッチェルの「A Case of You」だった。もちろん大好きな曲である。この調子なら安心して眠れそうだ。
Spotifyの履歴はこうなっていた。再生履歴が見れるので、気になった曲は翌朝確認すればいい。
こうして眠気を待っていると、突如として看過できない音楽が流れた。流石に衝撃が大き過ぎて思わず画面を見てしまった。
ジュディ・シルの1stアルバム『Judee Sill』収録曲「Jesus Was a Cross Maker」だ。
この世のものとは思えない美しい声、幽玄ながらも骨のあるオルガン、完璧なスケール感のストリングス、曲をダイナミックで感動的なものにするドラム。あまりにも強力なメロディ。
これはとんでもない。とてつもない音楽に出会ってしまった。
Twitterで検索してみると、かなり熱く語られていて、実は超名盤であることが判明した。なので、知ってる人からすれば何を今更、という感じだろう。しかし、当たり前だが知ってる音楽よりも知らない音楽の方が多いのだ
こんなものと出会ってしまうのは緊急事態としか言い様がない。僕はコンピ盤をやめてこのアルバムを聴くことにした。どうせまだ眠れないのだ。
続けて2ndアルバムを再生した。
どうやらオリジナルアルバムはこの2枚だけのようだ。
「Jesus Was a Cross Maker」を聴いたとき、この人はもう居ないんだろうな、と直感したが、今朝調べたらこの2枚を出してからシーンから姿を消し、薬物の過剰摂取により35歳(37歳という説もある？)で亡くなっていることが分かった。
評価が高まったのは没後のことらしい。
とにかくこの2ndアルバムも素晴らしい。しかし、ここでようやく眠気に包まれた僕は途中で寝落ちしてしまった。昼に目が覚めると、確かにアルバムは最後まで再生されていた。
こんな風に、些細なキッカケで素晴らしい音楽に出会えることがある。この出会い方は、ストリーミングサービスがなければ起き得なかったことだ。これは素晴らしい側面だと思う。
しかし仮にストリーミングがなかったとしても、いつか間違いなくジュディ・シルには出会っていただろう。
同じくらいの衝撃を伴って、、、かどうかは分からない。
調べてみると、タイムリーなことにこんなツイートを発見した。ジュディ・シルのドキュメンタリーが近々公開されるらしい。ぜひとも日本でも公開して欲しいものだ。
ジュディ・シルのドキュメンタリーが今年か来年に公開を予定していて、グレアム・ナッシュ、JDサウザー、ジャクソン・ブラウン、デヴィッド･ゲフィン等が証言を寄せているようですね。Judee Sill tribute precedes film documentary https://t.co/EEAlSny0XC
— creationrevola (@creationrevola) August 7, 2021
この文章はバイト帰りの電車で書いている。
本来であれば卒論に手をつけるべきだ。しかし、あいにくタブレットの充電もなく、車内でできる作業は限られている。だから記憶が新鮮なうちにこの日記(のようなもの)を書いている。
ここまでで1865文字。
卒論も40分程度でこのくらいスラスラ書ければいいのだが。。。
ポッドキャスト等の制作費にします。 ありがとうございます。