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Kassa Overall最新作『ANIMALS』購入特典ハンドブックに寄稿しました(Makaya McCraven『In These Times』について)

Kassa Overall『ANIMALS』

米シアトルのドラマー/プロデューサー/MCのカッサ・オーバーオールの3年ぶりとなるスタジオアルバム『ANIMALS』が、スクエアプッシャーやフライング・ロータスで知られるロンドンの名門レーベル〈Warp〉から、今週金曜(5/26)にリリースされます。参加アーティストとしてAnthony Ware, Danny Brown, Wiki, Tomoki Sanders, Bendji Allonce, Mike King, Ian Fink, Nick Hakim, Theo Croker, Andrae Murchison, Laura Mvula, Francis and the Lights, J. Hoard, Vijay Iyer, Lil B, Shabazz Palacesがクレジットされています。

Kassa Overall『ANIMALS』発売記念

 本作の発売を記念して、他ジャンルとクロスオーバーする新世代の進化系ジャズの注目アイテムを対象にしたキャンペーンが開催されます。

 期間限定で対象のアイテムに「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者、柳樂光隆さん監修の「Kassa Overall Handbook」という全14ページ(!)の冊子が付属。めっちゃ豪華!

 対象となるのは以下のアイテムです。

【キャンペーン期間】
2023年5月26日(金)〜 6月25日(日)迄

----------------------【対象商品】-----------------------
※全フォーマット対象
(国内盤CD、国内盤CD+Tシャツ、輸入盤CD、輸入盤LP、輸入盤LP+Tシャツ)
・Kassa Overall 『ANIMALS』(5/26発売)
・Louis Cole 『Quality Over Opinion(新装盤)』
・Makaya McCraven 『In These Times』
・Nala Sinephro 『Space 1.8』
・Emma-Jean Thackray 『Yellow』

beatinkのHPより引用

 カッサ・オーバーオールの新譜はもちろん、ルイス・コールマカヤ・マクレイヴンナラ・シネフロエマ・ジーン・サックレイらの最新作CD・LPを買っても付属するそうです。

 全部買えば5冊もらえるし、CDとLPどっちも買えば10冊もらえる計算になりますね。輸入盤も合わせると20冊もらえる!


 どれも海外メディアや国内でも話題になった先鋭的なジャズ作品ばかりですね。僕は特にエマ・ジーン・サックレイの『Yellow』のデラックス版収録の「Golden Green feat Wiki」が好きで、リアルサウンドの連載「lit!」でも扱おうとしてました(字数の都合で叶いませんでしたが)。


 この曲は米NYのラッパー、Wiki(カッサの新譜にも参加している)を客演に迎えた曲です。ちなみにサックレイはロンドンのマルチ奏者。

 このように国境もジャンルも超えて積極的にコラボレーションしたり要素を取り入れたりしている、面白くて新しいジャズミュージシャンがどんどん出てきているんですね。

 ハンドブックは、そういった視点からカッサ・オーバーオールを多角的に解剖する内容になってい(ると思い)ます。まだ手元にないので楽しみ。

 詳細は以下の通り。

----------------------【特典詳細】----------------------
特典:冊子「Kassa Overall Handbook Produced
 by Mitsutaka Nagira」

「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者、柳樂光隆氏監修による
ジャズの枠組みを逸脱する「異端児」の思想を読み解く

<掲載内容>
インタビュー
  カッサ・オーバーオール
  BIGYUKI
  トモキ・サンダース
・コラム
 原雅明「カッサが築き上げてきたジャズ人脈」
 つやちゃん「カッサの音楽を彩るラッパー/シンガー」
 小野島大「UK最先端レーベルとジャズの関係」
・アーティスト/著名人が語るカッサ
  藤本夏樹(Tempalay)
  和久井沙良
  MON/KU
  竹田ダニエル
・新鋭ライターが語る越境するジャズ・ミュージシャン
  もこみ:Makaya McCraven
  hiwatt:Emma Jean Thackray
  よろすず:Nala Sinephro
  hashimotosan:Louis Cole

beatinkのHPより引用&ちょっと編集しました

Makaya McCravenについて

 というわけで、この記事のタイトル通り、もこみは<新鋭ライターが語る越境するジャズ・ミュージシャン>という項目でLAのドラマー/プロデューサーのマカヤ・マクレイヴンについて2022年の傑作(と言っていいでしょう)『In These Times』を中心に、”どうしてマカヤは「ビートサイエンティスト」と呼ばれるのか?”というテーマを設定して600字ほど寄稿しております。

 hiwattさん、よろすずさん、hashimotosanさんに混じっているのが何とも恐れ多いですが、負けじとなかなか良い内容に仕上がったと思うのでぜひゲットして読んでいただきたいですね。

 せっかくなので、冊子には字数の都合上書ききれなかったことを書こうと思います。

 まず、マカヤ・マクレイヴンはシカゴを拠点に活動するジャズドラマーでプロデューサーでもあります。2015年に〈International Anthem〉からリリースした『In The Moment』で、ジャズの即興演奏とヒップホップ的な編集感覚を折衷したスタイルが評価され、一躍注目の存在となりました。

 以降、米英の気鋭ミュージシャンと録音し編集した『Universal Being』(2018)、ギル・スコット・ヘロンの遺作を再構築した『We‘re New Again』(2020)、〈Blue Note〉楽曲カタログ音源に新たな解釈を施した『Deciphering The Message』(2021)のリリースを通して修練してきたポストプロダクションと即興演奏が、極めて高い水準で融合されたのが最新作の『In These Times』(2022)だと言えるでしょう。

 この作品についてはハンドブックを監修した柳樂さんによる数々のインタビューを読みながら聴くと非常に充実した体験になると思います。

 私もマカヤについて書くにあたってそのインタビュー記事は大いに参照させていただきました。やっぱ書こうとすると本気で読んだり聴いたりするようになるので楽しかったですね。

マカヤ・マクレイヴンが語る、時空を超えたサウンドを生み出すための方法論 | Rolling Stone Japan

J・ディラを支えた敏腕エンジニアが語る「伝説の裏側」「音作りの秘密」「マカヤの凄み」 | Rolling Stone Japan

interview Makaya McCraven:時を経て形を何度も変えた楽曲の断片を繋ぎ合わせて作る”時間を超えた”作曲法|柳樂光隆 Mitsutaka Nagira

 ①は『In These Times』での革新的なアプローチについての解説的なインタビューで、アルバムの展開やメッセージについても触れられています。②はマカヤが影響を語るMadlibやJ Dillaといったレジェンド級のビートメイカーでお馴染みのレーベル〈Stones Throw〉による名作のマスタリングやM83、Animal Collective、Tame Impalaなどにも重宝されるエンジニアDave Cooleyへのインタビュー記事。マカヤの話もしているけど、それ以上にStones Throw関連の話がめちゃくちゃ面白いし貴重で、これを機に読み直せてよかったです。③は柳樂さんのnote記事。サウンドについてもっと踏み込んだインタビューが読めます。

 他にもネット上にはいくつもの記事があります。例えばele-kingのインタビュー記事もかなり質問内容が鋭くて面白かったです。

interview with Makaya McCraven シカゴの名ジャズ・ドラマー、経験すべてを詰めこんだ渾身の新作 | ele-king

さて、何を書くか?

 ここまで情報が充実していると、自分が一体何を書けばいいのか、書く価値のある内容にするにはどうすべきか、かなり悩みます。

 というわけで、ちょうど来日していたので観に行ってみることにしました。

 会場はBLUE NOTE TOKYOで、初めてだったので緊張しましたが、これを機に行けて良かった。

 ライブは最高の体験でした。音源は音源で素晴らしく良いですが、ライブは別物だし別格。音源同様ライブでも変拍子の嵐でしたが、各メンバーが顔を見合わせながらおそらく即興も混ぜつつリズムを補い合っていることでスムースに聴かせるのは驚異的でした。カオスをカオスのまま提示している感じ。そもそもジャズバンド自体たぶん初鑑賞でしたが、今後ロックバンドの演奏を観ても物足りなくなってしまうのではないかと危惧するほどでした。

 あと、これは生でしか見れないなと思ったのは、筋骨隆々の肉体が動いて音を出しているその姿。アンコールのクライマックスでマカヤの噴き出した汗が照明に照らされて飛び散るのも痺れました。

 というわけでライブは大満足でした。

 このライブでの感動も文章に反映しようと思ったのですが、字数の関係で大幅にカットしました。

 その代わりに、マカヤについて調べるあたって参照した多くの記事で使われていた「ビートサイエンティスト」という異名に注目した部分に字数を割きました。私が調べた限りでは2017年の海外メディアのインタビュー記事の「Beat Science with Makaya McCraven」というタイトルが初出ですが、特に説明はありません。そこで、マカヤが登場した2010年代という時代に着目して考えてみたことを、フランク・オーシャンのコーチェラでのパフォーマンスをオーディエンスのインスタライブでチラ見しながら書きました。

 これで一応情報の寄せ集めではない文章になったかなと思います。

 ぜひお店で確認してみてください!

<取り扱い店舗>
タワーレコード: 札幌パルコ、下田、盛岡、仙台パルコ、渋谷、池袋、新宿、町田、川崎、横浜ビブレ、浦和、津田沼、新潟、金沢フォーラス、名古屋パルコ、名古屋近鉄パッセ、鈴鹿、静岡、梅田NU茶屋町、なんばパークス、あべのHOOP、京都、広島、神戸、倉敷、福岡、若松、久留米、那覇、タワーレコードオンライン

HMV: 札幌ステラプレイス、エソラ池袋、立川、ラゾーナ川崎、ららぽーと横浜、イトーヨーカドー宇都宮、イオンモール羽生、ららぽーと富士見、イオンモール太田、阪急西宮ガーデンズ

その他: 代官山蔦屋書店、JEUGIA [Basic.]、エブリデイ・レコード、Hachi Record Shop and Bar

beatinkのHPより


ポッドキャスト等の制作費にします。 ありがとうございます。