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わがつま『第1集』(2021)

もこみと申します。

noteの更新が滞りまくっています。非常にまずい。まずいので何か楽に書こうということで、昨年の年間ベスト記事からレビューを抜粋して若干の修正を加えた上で掲載していこうと思います。

というわけで第一弾としては、そのランキングで「0位」として選出した、気鋭のレーベルNEW FOLKからリリースされた、日本の新人SSWわがつま「第1集」を扱います。

ちょうど一昨日の金曜日から、昨年12月に行った初ライブ「わがつま 単独公演 2021 冬」の模様を収録した映像作品が6/3(金)20:00〜6/9(木)23:59までの期間限定でストリーミング配信されています。
メンバー編成は以下の通り。

Vo/Key わがつま
Gt 猪爪東風(ayU tokiO)
Ba 大塚智之(ex.シャムキャッツ)
Dr 原"GEN"秀樹(NORTHERN BRIGHT)

【詳細】

これはお金を払って観る価値のあるライブなので、ぜひすぐにでも購入して観て欲しいですね。期間が短めなので、一旦こちらを購入してしまうのがいいかと思います。なんならこの記事は読まなくてもいいです。


レビュー(抜粋)

Released:Mar.31

Genres:Indie Pop

Label:NEW FOLK

 まずはなぜ”0位”なのかを説明しなければならない。

 本作はラッキーオールドサン、田中ヤコブ、台風クラブなどが所属する安心と信頼のインディーレーベル、NEW FOLKからリリースされた。牧歌的な雰囲気の漂うメロディーと魅力的な声、宅録感満点のトラック。全曲がキラーチューンだ。'21年聴いた回数の最も多いアルバムのひとつだし、正直文句なしの年間ベストアルバムである。

 しかし、私は本作収録の楽曲の大半を、2019年からサウンドクラウドで頻繁に聴いていた。そのため、どうしても”2021年のベストアルバム”という扱いにするのは、評価軸がブレ過ぎている気がして、無理があるように思えた。これが”0位”の理由である。もう一度言うが、間違いなく自分にとってはこのアルバムが2021年のベストアルバムである。

 きっかけは1年の浪人期間を経て、同級生よりも一足遅く大学に入学した2018年に遡る。本作にも収録されている「スローダウン」のリンクに「天才だ」という一文を添えた横沢俊一郎氏のツイートだった(なお、該当ツイートはどうしても見つけられなかった)。そこで何気なくリンクを開いたのが始まりだった。ローファイで陽気な雰囲気ながらも、胸を締め付けるような切なさも携えた歌の佇まいにあまりに衝撃を受け、すかさず「わがつま」について調べた。当時はサンクラ、Twitter以外には何も見つからなかった。
 その後はサンクラをこまめにチェックし続けた。特に、「犬が通る」がアップされたとき、この人は本当に天才なんだと思った。いつか何らかの形でデビューしたら古参アピールをしよう、なんて下品なことを思った。
とは言え、どうしても誰かに教えたくなった。好きな音楽は独り占めするよりもシェアした方が良い。大抵は聴いてくれないし、それを大して期待することもない。だからこそ聴いてくれたときの喜びは大きい。僕に音楽をたくさん教えてくれた高校以来の友達(その子はandymoriもカネコアヤノも教えてくれた)にわがつまを教えた。そしたらこの曲をサークルかなんかでカバーしてくれたらしい。
 カネコアヤノの『燦々』のリリースがアナウンスされた’19年の初夏のある日、カネコアヤノの新作リリース楽しみだねというその友人との会話の流れで、友人は田中ヤコブの『THE FOG』というEPを勧めてくれた。僕は1曲目を聴いたとき、「わがつまみたいだ!」と真っ先に思った。確かにわがつまはそのEPに客演で参加していたが、それを知らずに口走っていた。彼女は僕の感性の鋭さを褒めてくれた(まさか2年後ほんとうにNEW FOLKからデビューするとは!)。僕は彼女のことが好きだったし、いつも教えてもらう側だったから嬉しかった。
 それから色んな音楽に手を出すようになっても、僕は時折サンクラでわがつまの曲を「イッキ聴き」していた。それでもやはり多様な音楽への興味・関心が拡がるにつれ、その頻度は下がっていたとは思う。
そんな中、’21年3月、突如としてほとんどの音源がサンクラから消えた。とても驚いたし、ショックだった。とりあえず残された数少ない音源を聴いた。それから多分2、3週間後、Twitterを眺めていると、ピンク色の背景に謎のカラフルな4本足の哺乳類らしき動物が描かれたアルバムジャケットが目に入った。
 そう、ようやく正式にリリースされたのだ。そのとき既に4月になっていた。「古参アピするぞ」などと意気込んでいたにもかかわらず、僕は完全に出遅れてしまったのだ。それでも、Spotifyで再生したときの感動はひとしおだった。おまけにカセットテープも販売するらしい。インターネットの片隅の片隅でひっそりと聴き続けた音楽が、ついにフィジカルで聴ける!

 出来るだけ色んな人が手にするのが好ましいので、在庫状況を見て、最終的に3本買った。観賞用、保管用、予備の3種類だ。自分は元々こんなことをするタイプのオタクではない。後に発売されたレコードは1枚だけ買った。2枚目も欲しくなっている。

 アルバムには未収録だが、この「街」という曲の持つ叙情は普遍的なものだろう。歌詞、曲、演奏、映像に加え、音質も相まってこちらに迫ってくる奇跡みたいな瞬間が詰まっている。


 2021年12月10日、吉祥寺Star Pine’s Cafeでバンド編成でのライブが行われた。その演奏はアレンジがかなりノリノリで、ボーカルも情熱的だった。それは音源と比べても少し意外なほどだった。ライブを観ながら、サンクラで聴いていたあの頃から生演奏を聴いている今に至るまでの、つまり大学2年から4年までのありとあらゆる出来事が、走馬灯のように次々と頭に浮かんできた。

ああ 過ぎる日々を 愛し尽くしたい
まっしろ - わがつま

その日それまで何度も聴いていたはずの歌詞が、全く別の響き方で、熱を持って、僕の胸に届いてきた。

Fav:日曜日|まっしろ|スローダウン

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