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遠くまで #短歌条例

遠くまで歩けないから背を割って異形の翼取り付けたけど、一枚とまた一枚の羽根たちがこぼれるだけでどこにも行けず、形而下の海図を眺め行く先もわからないまま進めもせずに、諦めが染みわたるよな青空の下で喇叭が鳴るのを待った。

薄闇に火星と土星煌めいて、見下ろしている針の穴から、どこまでも進む光といつまでも止まる私の世界の違い、どうしたら追いつけるのか、寂しさを海にこぼして考えていた。

真鍮の肌は汚れて抉られて、歪に伸びた翼の骨が、醜くも懐かしいから取り外すこともできずに血が止まらない。流れ出る血の全てさえ、僕という罪の重さを贖えなくて、溶けかけた肉体という形骸化した魂を宇宙に返す。

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