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ブルース・チャトウィン『ソングライン』ノモス ノマド

“ノモス”は

放牧地を意味するギリシア語で、

“ノマド”というのは

放牧地の割当を決める首長、あるいは長老のことである。
そこから

ノモスは

「法律」や「公平な配分」や「慣習によって定められたもの」

を意味するようになり、

すべての西洋の法の基礎になった。

放浪していた民であったころには

みんなが平等に生きることができたのだ。


敵意は

厳しい自然や

襲ってくるような野生動物に向いていた。


人間同士には

敵意を向けることもなく

その意味も持たなかった。

“ネメイン”という動詞ー「草を食わせる」、「放牧する」、「並べる」、「ひろげる」などの意ーは、

ホメロスの時代には

「分配する」、「振り分ける」、「分け与える」などの意味も有し、

特に土地や勲章や肉や飲み物について用いられた。

みんなで分け与えることで生活が成り立っていた。

生きていく上で

分け与えることが当然だった。

“ネメシス”は

「正義をおこなうこと」、

「神の裁きを与えること」を意味する。

そこには正義があった。

神の存在も確かに感じられた。

また

“ノミスマ”は

「流通通貨」を意味し、

そこから“古銭学(ヌミズマティクス)”という言葉が生まれた。

そして

通貨の概念ができるような

取り引きができていった。


定住生活を

やむなくしなければならない事情もあった。

強制的な定住もあった。


敵意が人間同士に向けられるようになってから

人間の本能が

間違って用いられるようになったのだ。


しかし

間違いを認めて

やり直すこともできるのではないだろうか。


どうなるのだろう。

世界は

どうなってしまうのだろう。


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