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美しくないアフォーダンス

皿にのったケーキの周りにデコレーションされたベリーソース

テーブルと高さが同じソファ席

機械貼りでキャラメル包みされたお菓子のパッケージ

コーヒーカップのソーサーに乗ったスプーン

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これ全て、私の思う美しくないアフォーダンスたち。


ケーキの周りにデコレーションされたベリーソースやチョコソース。ケーキにソースを付けながら食べると、皿にはソースを拭った痕跡が残り、食べ終わりにはお世辞にも綺麗とは言えない皿が出来上がる。

ソースでのデコレーションは、食べる前は美しい。ケーキを際立てる演出のひとつだろう。しかしそれらは、食べ終わりの美しさまでは計算されておらず、いくら食事マナーに気をつけて上品に食べ進めても、ごちそうさまのお皿には汚い食べ跡が残るのである。下品の誘発だ。

ならばソースをつけずに食べればよいが、そこにあるのは紛れなく"ソース"である。だとしたら、ほとんどの人は無意識にそれをつけるだろう。ここまで誘発されるアフォーダンスの結果に美しさがないのは納得がいかない。


テーブルと高さが同じソファ席。食べる際に上半身が前屈みになり、猫背になり、犬食いになる。食事中の姿勢としては大変不快だ。


機械貼りでキャラメル包みされたお菓子のパッケージ。隙間なく糊付けされたその包みには開封口もなく、紙の端に爪をたて、包装紙をビリビリに破かないと中身に辿り着くことができない。包み紙を丁寧に剥がしたい私としてはストレスの塊である。


コーヒーカップのソーサーに乗ったスプーン。コーヒーカップを持って上に上げる度に、ソーサーに乗ったスプーンが中央へと滑る。カップをソーサーに戻す時にはその邪魔になったスプーンを手前にずらし、中央にカップを置く。コーヒーを飲む度にこうした動作が発生する。

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通常デザインにおけるアフォーダンスとは、無意識の中の心地よさのデザインである。なんの気なしに自然な生活の中でストレスなく上品さが誘発され、質の高い生活を営むことができる。

しかしこれらは、下品の誘発。まだまだ他にも沢山存在する"美しくないアフォーダンス"たち。こうした動作は潜在的に誘発されるが故に受け手は回避しにくい。されるがままに、行いの質が落ちていくように感じる。

その"美しくないアフォーダンスの提供者"がそれに気づき改善されることが望ましいが、彼らはそこに悪気があるわけではないので、それに気づくことは稀だろう。なのでそう言った場面に出くわした時は、アフォーダンスに負けない自分を確立させる。これは戦いなのだ。絶対に私の上品さを崩してたまるか、と。

今日もそんなことを思いながら、顕在的に自分の生活のクオリティーを保つのである。


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