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それは旧共産圏のジャズだった

トヌー・ナイソー、澤野工房(ヨーロピアンジャズ専門のレーベル)のCDで聴いたな~と思いながら調べ直したらエストニアのピアニストであることを知る。エストニアということはソ連崩壊の91年まで鉄のカーテンの向こう側の人間だったというわけである。

旧共産圏音楽はソ連国有レーベルメロディアに統制されていた分、奇妙な進化を辿っており狂ったプログレバンドが東欧にウジャウジャとひしめいていたりいるのだが、トヌー・ナイソーのジャズは基本的にストレートでありながら、やはりどこか西側からズレた部分がチラつく。

1970年のアルバム、『Tõnu Naissoo Trio』では力づくの8ビートがねじ込まれてくる「Boy and Girl (Poiss Ja Tüdruk)」がひときわ辺境感を際立たせる。ソフトロックのような、プログレのような……ある意味60年代のアメリカを吸収しているのかもしれないが、このリズムのつんのめるようなドラムが癖になる。

ラストを飾る「Come Ever Up To My Joys」はビル・エヴァンスのようなリリシズムを感じさせる演奏となっている。一度気になり始めたドラムのつんのめり感がまだ引っかかるが……

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