マガジンのカバー画像

【詩と心と声】シリーズ集

44
女優・望木心の心の中を現代詩で綴っております。Twitter、Instagramで公開した内容をアップしてゆきます。新しい詩も掲載予定。心が寄り掛かりたい時、癒されたい時、優しく…
運営しているクリエイター

#女優

愛してた人へ

あいつに失望する度、自分を傷つけた あいつに怒る度、また自分を傷つけた あいつの嫌いなとこ 思い出す度、同じとこ何度も傷つける 痛いよ、息がまともにできないよ 助けて欲しいのに あいつを想ったところで 傷ついたところに手当てはしてくれない あいつが残していった 手紙の言葉だけが頼りで 僕は情けないくらい泣いた お前に見せられないくらい、ずっと 愛されていた、愛していたんだ そう思い出すから 手紙はもう読みたくない 言葉が刷り込まれていくのが嫌で また自分を傷つける

未来UFO

息がしにくい日 君の笑顔が焼き付いたんだ 帰りにチョコレート・ドーナツと 苦いアルコールを飲みながら歩いた なんとなく好きだった 夕焼けの空が 今じゃすぐ暗くなってしまって 僕は居場所がないまま いつものロックンロールにすがって ヘッドホンで世界を分断した 息がしにくい日 月食が起きたんだ 半透明のでかいUFOが 風に流されてくみたいに消えたのは まるで僕そのものだ 頼りはチョコレート・ドーナツと苦いアルコールと ロックンロールだけで 焼き付いた君の笑顔思い出して よう

大晦日Bブルース

冬 澄んだ青い空にひんやりした空気 あなたの言葉であたたかい涙が溢れたよ ひっそりと 春 少しだけ暑い日が続いたあの頃 蜃気楼みたく未来が見えてしまって 今の自分を書き換えたくなった 夏 眠れなくて 夜明けまで友達と飲んでぐだぐだになった日も 否定ばっか繰り返してた でも、ありがとって実は思ってたんだ 秋 僕もみんなも少し変化していて それに気付いてるけど 少し寂しいんだけれど ただ笑顔で隣にいる事だけがすべてだった 大晦日 今までを愛おしく思えるようになる

2022年12月28日(水)

ぴかぴかひかる街の中 スーパーの袋をぶら下げて くたびれた靴を見ながら家に帰る でも今日はちょっとだけいつもと違ってて あいつは今どうしてんのかなとか あの日は最高だったとか あの時は人生最悪だったとか 好きだとか嫌いだとか 色々と思い返して かさばるようなものを抱えてたって気付く 今更だからなんだって感じなんだけれど 浮かんだ白い吐息の向こうに てんでばらばらにひかる星が広がっていた てんでばらばら、好き勝手きらきらしてる 再びあいつとかあの子のことを思い出す 僕

死んだ魚のふりしても私

池の中にとびこんだ 冷たさと泡に包まれた 水面の光が眩しい 揺らめく 逆さまになって深く潜りたい でもすごく浅くって 到底叶いそうにないね 仕方ないから魚のふりして泳いだ 時々死んだふりして 空を見上げた なんだか自分が存在しているのが 嫌でも分かっちゃって 私はわたしでしかないんだって思い知らされる 水と私が溶けて混ざり合っても私は私 魚のふりをしようと、死んでも私 海に行ったら深く潜れるね キレイな世界 見たことのない世界 海に行きたいって 脚も腕も大きく動か

知りつづけて

私を知っていますか あなたを知っている 私を覚えてますか あなたを忘れられない まぶしい記憶 私の中で生き続けている青い鳥たち 唄いつづける懐かしいたましい達よ 悲しい唄を忘れた君たちのかわりに 私は涙を落とした 青い鳥たちが唄うさえずりがよみがえる 私の体の羽根が生まれ変わりつづける くりかえし、くりかえし くりかえし、私を知る くりかえし、あなたを知った くりかえし、私を思い出す くりかえし、あなたを刻んだ 私にあなたを刻む あなたと唄いつづける わたしは

解答とゆらぎ

これが最後の恋だと ついさっき知ってしまった この時の私の脳内は 恐ろしい速さで論理的な結果を 導き出そうとしていた この考えと解答の揺らぎは 微塵も感じさせず 私はこの求め方にうなずいてしまった 「最後の恋」ならば 一生叶わなくて良いのだろうと思った 最後の恋は美しいものであるはずだから ほんの少しでも この回答を知ってしまう迄の時間が長ければ 私はもう少し女でいられたに違いない 女でいるまま、美しくあろうとするのは 私にとってとても難しいものだった 叶わないから

私たち

昼下がりの小さな薄暗い部屋で 昨日のあなたの稚拙さを思った 私が愚かなのは昔から信じてる あなたの哀しみに唇を重ねる前に 胸の中のゆらぐ、きれいな炎を分けて貰う あなたは私に祈りを伝えていたね とても醜い私は 美しいあなたにやっと出会えて その瞬間を覚えているよ 永遠に あなたも私も愚かで醜い でも忘れないで 私たちは永遠に美しい生命だっていうこと 忘れないで

記憶の消滅

君のことをどうにかして 思い出すことも 隣にいた時の喜びだとか 全て、すべて消そうとしたのだ 砂のようにざらざらと風に吹き飛ばされた、 跡形もない上半身の自分自身を毎日想像した 風に飛ばされた砂は日常の空気中に混ざって 他と見分けがつかなくなるだろう ざらざらした感触が肌を汚していく 何もなかったように思い込む 記憶がそこだけすっぽり抜け落ちたように そうやって想像する 君を想い狂っていた 慣れようと努力していたあの時の感情さえもぶち殺して もう見えない これから先

体温

深夜、顔見知りの男の子と話した あの子、何かが嬉しくて泣いていた その晩、私は夢を見る 私は小さくて薄いタオルケットに体を丸めて眠っている 少し肌寒くて、心許ない ブランケットがふわっとかかる うっすら、目を開ける 昨日、泣いていた男の子がにこりと微笑んでいる あたたかい 私は安心し、目を閉じ、ふたたび夢の中へ戻る 朝、カーテンから漏れるひかりを 久々に美しいと感じた

またたき

心臓が震えている 胸の中に広がる小さな宇宙 たくさんの星が生まれては たくさん消滅している これがまたたき 流れ星が地球の大気圏に入り スーッと消える瞬間 心の中でつぶやく この時間が長く続きますように

あなたというあなた

ここのところ あなたのことをよく思い出します あの頃 あなたが私に与えてくれた美しいものがなんだったのか 私にははっきり分からなかった 十年も経ってようやく それが分かってきた気がします それは私が人生の中でずっと一番に欲しかったものでした やっと気付けた 今になって 私はあの頃のあなたと同じ年齢になります あともう少しで

白昼の月と太陽

頬に差さる 白昼の陽に焼かれて 負けてしまいそうな午後3時 誰もいない森へ 静かな場所へ 小さな緑の手のひらが無数に広がり 遠いまぶしい青空を隠す さっきまで光に憎さを感じていたのに 私は途端に寂しくなって そこに美しさを見つけた 昨日 散ってゆく葉桜の枝の隙間から 月が見えていたのを思い出す 白昼の月は 姿を変えて 私に語りかける 「そばにいるよ」

アスファルト

昨晩 雨が降った 何かの懺悔のような雨音は 頭上の屋根に打ち付けられている 深夜 突然目が覚めた 飛び起きた途端に 忘れていた人の顔を思い出す 夢は何を見たのかは分からない 私は仄暗い水の中を泳いでるような気分のまま 朝日に射された 眩しさに辟易した 理由もわからず 答えを探しに外へ出る 昨晩の雨が蒸発している匂いがする 照り返す濡れたアスファルトの傲慢な光が 足元で道を作っていてくれた あの人も きっと どこかで今日 歩いているに違いない