モラトリアム

恋の歌が作れなくて 愛の言葉も紡げなくなって
だから誰かを励ますような歌を 何もかも知ったように歌って
そうやって 救いようのない自分をごまかしていたの

多分、私の中の迷いを 声にすることが恐ろしくなって
このすさんだ社会を批判して 自分ごとのようなそうじゃないような
だからこんな 動揺している私を見せたくなかった

一つ一つ慎重に 元に戻らない言葉を吐く
アイスティーの溶けきった 氷を探すようにかき混ぜ
あなたが何を言うのか怖くて 急いで言葉を塞いでしまう

誰が許すとかじゃなくて
答えのないものに正しさもない
あなたがここにいると確かめたい 
無駄なことなんてない なにひとつ

喫茶店を後にして しばらく何も言えずに歩いた
私たちを知らない人混みの 無関心さがどこか心地よくて
誰だって 秘密の一つや二つ抱えたまま死んでく

風に溶ける排気ガス 元に戻らない関係って
キスをしたときにわかってた 物分かりはいい方だったから
それでもほしがるばかりで 自分の弱さが醜さになる

あなたの前では余裕ぶって賢い人のままでいたかった
名前呼ぶたびに 死にたいなんて
そんな満ち足りた顔で言わないで
私はあなたのことが

誰が許すとかじゃなくて
答えのないものに正しさもない
私があなたの中にいることを確かめたい 
無駄なことなんてない なにひとつ


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