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おばあちゃんと干し柿をつくる

小さいころ、おばあちゃんのお手伝いをするのが大好きだった。

春には、よもぎを摘んで大好きなおもちに練りこんでもらったり、夏にはおばあちゃんと畑でプチトマト狩りをした。
紅葉の季節には、山におちている栗をいっしょにひろって、ホクホクの栗ごはんをつくってもらった。

移ろう季節との関わりかたを教えてくれたのは、紛れもなくおばあちゃんだ。


先月テレビで、干し柿をつくる番組をみた。「あんなにおばあちゃんにいろいろ教えてもらったのに、干し柿の作りかたは知らないや」


そんな中、先日一年ぶりにおばあちゃん家に帰ることになった。

台所にいくと、大量の渋柿をおばあちゃんが、むいている真っ最中だった。 

こんなにベストなタイミングに帰ってこれるなんて、とわたしは喜んで台所にいっしょにたった。

おばあちゃんがやっている通りに真似をしてみる。
渋柿の皮をピーラーで丁寧にむいていくと、
白くて固そうな身が姿を表す。
皮は思ったよりも固く、なかなか思うようにむけない。力仕事だ。

「手が渋いじゃろう?」とおばあちゃんがきいてきた。
手のひらが、ねちゃねちゃともツルツルともいいがたい不思議な感じがする。
なるほど。これが渋いという感覚なのか。今まで生きてきて初めてしった感触だった。

ラッキーなことに、渋柿の中にときどき甘柿が混ざっていた。
甘柿は皮を剥いたときに、オレンジいろっぽくみえるらしい。
わたしは違いがわからなかったけれど、おばあちゃんが皮を剥いた甘柿を丸ごと食べさせてくれた。

かぶりつくと、パリパリといい音が響く。
柔らかすぎない絶妙な熟れ具合が歯に心地いい。
ほのかな甘味が口いっぱいにひろがる。

甘柿を食べつつ、ボウルいっぱいになった渋柿をロープに吊るしていく。ひもを柿のえだが通れそうなくらいの隙間を開けて、えだを滑りこませる。

一つのロープに20個くらいの渋柿を吊るしたら、ロープを上で一つにくくる。
柿がきれいに整列した。
「家のベランダに2週間くらい干しとくとおいしくなるよ」とおばあちゃんが教えてくれた。


帰ってベランダにおばあちゃんとつくった干し柿を吊るしてみた。
上手に熟れたら、あたたかいほうじ茶といっしょに食べよう。おばあちゃんにも美味しくできたよって伝えなきゃ。


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