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ポーランド映画

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2022年7月の記事一覧

『アマチュア』

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ

観るのは二回目だった。『平穏』のその先のお話とも取れる。妻と子供と家、平穏な生活を望んでいたはずの主人公はカメラと出会うことで、取り憑かれたように身の回りのものを撮影する。次第に「演出」や「編集」を知り、制作の幅を広げていく。ポーランドにおいて映画を撮ることは、被写体を社会的に傷つける可能性があり、フィルム自体が利用されたり規制されたりする。主人公は次第に全て

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『傷跡』

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ

ずっと会議シーンで話もあんまわからんかった。監督自身も認める失敗作らしい。歪んだ社会主義リアリズムへのアンテテーゼのような感じ。テレビマンも主人公の家に行くことによって彼の人間性を知る。社会的である自分と個人的である自分の間の葛藤は、ラストのカメラの後退によってドア枠に切り取られる主人公の姿から見てとれる。

『夜行列車』

監督:イェジー・カヴァレロヴィチ

ベタだけど抱き合うシーンが良かった。傷ついた者同士の交流というか。群衆が犯人に覆いかぶさるショットが気持ち悪い。冒頭にも歩く人々の姿を空撮で捉えていた。夜行列車という空間の中で切り取られる人々との対比なのかな。男がたむろする通路を狭そうに通り抜けるのは『アンナの出会い』っぽくもあり、全編漂う倦怠感も近い気がする。ヒーローであるはずのチブルスキは誰からも労われるこ

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『異なる年齢の七人の女性』

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ

それぞれがそれぞれの人生とダブっているようで、でも踊っている彼女たちの身体性はその人にしか出せないものなわけで、赤の愛や偶然に近い運命論的なもの
個人と全体のせめぎ合いはポーランド的というかキェシロフスキ的というか映画的というか
衰えた老女はもはや踊ることすらできない