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古典ハリウッド映画

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記事一覧

『美人モデル殺人事件』

監督:H・ブルース・ハンバーストン

冒頭の取り調べシークエンスから、横移動でショットを割らずに二人の語りが繋がれていきワクワクする。信頼できない語り手がわらわら登場するサスペンスからラブロマンスに変貌していき、最後は二つが組み合わさる。手錠の鍵を見つけるのではなくノコでギコギコやる映画を初めて観た。

『東京暗黒街・竹の家』

監督:サミュエル・フラー

日本家屋に見えない日本家屋が独特の舞台を作り上げていて面白かった。襖が破れると悪党が勢揃いしているシーンとか、風呂でパンを箸で食べるシーンとか好き。ラストの舞台もアイデアの塊で、子どもとギャングの食い合わせは『殺人捜査線』の時もそうだけどメチャクチャに良い。山口淑子をビンタするときの雷みたいな音、暴力的につながる一つの愛の演出はフラー節といったところか。鈴木清順みたいな

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『暗黒の鉄格子』

監督:ドン・シーゲル

反復される画面奥手前の運動がラストに引き継がれたり、工夫された照明だったり、技法だけでも楽しい。特にダイバーに襲われる時の切り返しが唐突かつめちゃくちゃ怖い。光の当たり方が人間のものではない。最後本当に都合よく恋人が車で来て、お約束のように車で2人で去っていくのはもはや笑えるノワールあるある。

『暁の死線/タイムリミット25時』

監督:ハロルド・クルアーマン

流石に緊張感なさすぎるし会話も洒落てないので別に面白くない。ただ、スーザン・ヘイワードに黒いドレス着せたのは本当にわかっている。発話といい好きな女優だし、『不屈の男たち』でのあの黒ドレスが素晴らしすぎたので。彼女が事件現場から帰ろうとしたとき、子犬と警察署がモンタージュされて、彼女の決断に繋がるのがスマートで好きだった。最後のどんでん返しは知るか、って感じだった。

『私の名前はジュリア・ロス』

監督:ジョセフ・H・ルイス

序盤の「ここは片付けましょう」が怖いし、ちゃんと母息子にムカつく描写がされてるのが良い。それでいて屋敷のギミックはツッコミどころも多く、「毒薬」と堂々と書かれている毒薬に笑った。息子の死に方が良すぎるし、ナイフを使わずに石を使おうとしたことで死に至るのもしっかりしてる感じがする。

『風』

監督:ヴィクトル・シェストレム

差し替えられたはずのラストだが、個人的にはめちゃくちゃ良かった。主人公を苦しめていた風が味方になるところの良さ。キスを阻んでいたはずの風は最後、むしろ愛の情動を強調する舞台装置として機能する。フラーの映画とか『大雷雨』とか、キスした瞬間にドアがバカみたいに強く開くの好き。埋めたはずの死体が風で露わになるシーンが怖すぎる。リリアン・ギッシュの顔芸は素晴らしいけど、あ

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『人生の乞食』

監督:ウィリアム・A・ウェルマン

冒頭から多重露光や視線など分かりやすい映画技法が続いて楽しい。二人とも人生において何かを求めていて、そこにオクラホマ・レッドが加わることで客体化され、彼ら自身がすでに満たされていることがわかる。そしてオクラホマ・レッドもそんな彼らに己を捧げることで自分の人生を満たす、ということなのだろうか。用意してあげた女性服が趣味丸出しなのが微笑ましいし、一回去ったのにしれっ

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『深夜復讐便』

監督:ジュールス・ダッシン

プロットはごちゃごちゃしているけどその分いろんなところが良く見える映画だった。一応ファム・ファタールっぽくリカがいるのだが、財布を盗もうとしたのかは結局不明だし、ヒロインという感じはあまりない。むしろ警察を呼んだことで復讐に一役買っているし、あくまで完遂させるための役割でしかない。最後はとってつけたように結ばれてはいたが。それよりもエドとの友情の方が気になる。あのトラ

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『最前線』

監督:アンソニー・マン

モンタナの大佐への忠誠心がBLっぽさもある。ロバート・キースの佇まい自体が戦場だとかなり異質に感じる。三発経ったら走り出すシーンの怖さ(走らないといけない)がある。

『ステージ・ドア』

監督:グレゴリー・ラ・カーヴァ

どういう気持ちで見ればいいんだ、、とも思うが、『暖流』の序盤の誕生日シーンが全編続くような小気味よさで突っ走っていくから飽きることはない。彼女たちの絆を現すスピーチの後で、ハミルトンの生死すら問題にならない感じが残酷でしかないし、ラストに新しく入寮した人を見た瞬間に、「迷える子羊がもう一匹...」みたいな気分になってしまった。

『殺人捜査線』

監督:ドン・シーゲル

絶望的な面白さがある。サウナの煙、同じく子供を出入りさせて静寂に緩急をつける演出、カーチェイスの迫力、全部面白い。あんなにぶつかりそうなカーチェイスなかなかない。

『魅せられて』

監督:マックス・オフュルス

ロバート・ライアンが物理的にデカい。さらにメイソンとの対峙シーンなどでは仰角で撮られるから威圧感が増す。流麗なカメラワークは健在で、流れるような人物の動きを動線とし、カメラが止まると構図が完成しているのが見事としか言えない。奥行きもちゃんとある。見ているだけで楽しかったけど、最後の方がよくわからなくなった。あんだけデカかったのに気づいたら死んでた。

『裏切りの街角』

監督:ロバート・シオドマク

入院した後、背もたれを上げて鏡の反射で見るシークエンス、ラストの扉など舞台装置を生かしたサスペンスが楽しいが、前半は少しもたつく感。

『その女を殺せ』

監督:リチャード・フライシャー

全編ずっと面白かった。冒頭、ネックレスが転がって階下に落ちる動きから一気にサスペンスが展開する。どんでん返しも主張しすぎてなくて、展開上は自然にすら感じる。狭い列車内において人々は、常にドアによって切り取られ、そこにサスペンスが生まれる。外を走る車を通じて室内を移動するデクパージュもスマート。並走してくる車なんてどう考えてもワクワクする。