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フランス・ベルギー映画

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記事一覧

『最後の賭け』

監督:クロード・シャブロル

シャブロルの映画はなんでこんなに画面が冷えているんだろう。2人の関係はいくらでも温かくコメディチックに描けそうなのに、ハードボイルドですらある。中盤は誰が騙されてるのかもよく分からなかった。腰低いくせに暴力的なギャング、死体はしっかりとグロかった。最後は珍しくほっこり終わる。運び屋の間抜けなツラインサートで笑った。イザベル・ユペールの髪型が自然に変わるのが良い。

『日曜日が待ち遠しい!』

監督:フランソワ・トリュフォー

トリュフォーの映画って、そうだと言われないと分からないのがいい。プロットと映像のバランスがちょうどよい。省略→のちに回想の語り方が多い。

『アデュー・フィリピーヌ』

監督:ジャック・ロジエ

2年ぶりに観た。サントラが好き。内容はとりとめがなさすぎてちょっと飽きるけど、ラスト付近がいい。「愛してるとしか言えないのか?」徴兵の暗い影が見えながらも無邪気に笑う女子二人の姿、ラストはその無邪気さともまた違った、空虚にも感じる手の振り方に感動する。蓮實大先生もそんなことを書いていた気がする。

『トルテュ島の遭難者たち』

監督:ジャック・ロジエ

なんかすっごい面白かったし元気もらった。ドキュメンタリーみたい、とは安易に言いたくないけど、偶然起こった出来事に偶然カメラを回してるみたいな即興感がロジエらしくて楽しかった。空港のシーンで飛行機の音がうるさくて声が聞こえない、船の上から叫んでみても陸の人間には届かない、みたいにコミュニケーションがうまくいかないモチーフが繰り返される。泳げば辿り着けると思っていたトルテュ島

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『ポネット』

監督:ジャック・ドワイヨン

誠実で丁寧な映画だと思った。カメラの位置は常に子供の高さに置かれ、子供の予測しにくい動きが愚直に撮られている。父親や友達の母親と歩く時も常にポネットの高さにカメラは置かれ、明確に子供と大人の世界が断絶される。母親と歩く時はロングショットで撮られることが多く、母親もポネットの目線で語りかける。切り返しも母親とポネットは対等に行われる。振り返った時の景色、そしてさらに振り

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『一晩中』

監督:シャンタル・アケルマン

自分の視力の悪さなのか知らないが、人物の顔が全然見えず、話がわからないな‥と思っていたのだが、そもそもこれは話がない映画なんだ、と途中で気づいた。いろんな人が同じ身振りを繰り返すこと、そして同じ夜の中でそれらが展開され、誰にも平等に朝が訪れること。時間経過の表現などは好きだけど、一つの物語の上に幾人もの孤独が浮かび上がる『アンナの出会い』の方が好みかな。ミニマルなの

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『幸福の設計』

監督:ジャック・ベッケル

人生の転機はささやかな勘違いであり、それが生まれる瞬間の日常生活の描き方が楽しい。横断歩道を渡る動きの反復、螺旋階段でまわり込んでキスするところも愛おしいし、窓から互いの部屋を行き来するのも楽しい。「高くつくぞ」に対する「こっちは文無しだよ」の力強さ。とにかく早くて、切り返しによって互いの表情が融和していく様とか、極端なクロースアップにすらもスピード感がある。自分は宝く

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『密告』

監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー

揺れる電球とそれによって光と影に反射する人物の顔がそのまま二面性を表すように、結局最後まで誰が犯人なのか分からない。人物関係が難しい。いい切り返しショットって語りと完全にリンクするものと語りから完全に逸脱するもののどっちかなんだなと気づいた。

『偽れる装い』

監督:ジャック・ベッケル

エレベーターの下りの先で彼女と出会い、友人と別れるのがあまりにも示唆的だった。

『大恋愛』

監督:ピエール・エテックス

エテックスらしさがモノクロ時代と変わりつつあるのだろうか。少し冗長にも感じた。タイトルは『大いなる幻影』のモジりなのだろうか。切り返しで人物が変わったり、人々の妄想が強く作用する。人物が目を離して作業する隙に何かが入れ替わる、みたいなコメディが多めの傾向なのだろう。人にされたら嫌なことを自分も知らずのうちにしてしまっているのかもね、と反省した。

『エドワールとキャロリーヌ』

監督:ジャック・ベッケル

スクリューボールコメディに近い会話の応酬、反目の中にこそ愛があり、最後のベッドでそれが結実する構成は『或る夜の出来事』に近いものがある。俳優の動きに合わせたパンで目まぐるしく展開が入れ替わるのが見ていて楽しい。ホックを止めること、ラジオを止めること、ベットの下に物を隠すこと、反復と差異が二人のズレと一致を語る。夫がピアノを弾いている途中で妻がドアを蹴破ってきてビンタでも

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『健康でさえあれば』

監督:ピエール・エテックス

1話目
本を逆さにすると映像も逆さになるのが面白かった。ラストも怖い。
2話目
映画館あるある。CMへの皮肉?
3話目
音がやかましく、それがコメディに繋がる。膝叩かれると足が上がるおじいちゃんが一番面白かった。
4話目
黒沢清『カリスマ』みたいな根源的な怖さがある。銃がいつ作用するのか、感電は即死でしょう。

『カウチ・イン・ニューヨーク』

監督:シャンタル・アケルマン

「一目惚れ」って多分一目惚れじゃなくて、絶対にその人にすでに出会っているからこそ惹かれるのだと勝手に思っている。この映画でも、二人は互いに顔を合わせる前からお互いの生活に触れ、クロスカッティングによって身振りは共有されている。だから初めてのセラピーでは、目を合わせずとも「フーム」と「イエス」で心を通わせることができる。他人の出来事を聞くだけだった精神科医が自分の話を

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『ヨーヨー』

監督:ピエール・エテックス

エテックスは帽子をかぶっているとキートンにしか見えない瞬間がある。前半は無声映画にギャグっぽい音がつけられて、世界恐慌あたりを境にトーキー映画になる。無声映画には常に爆発はしない上品なおかしさが漂っている感じがする。三人でサーカス巡業するときの車のシークエンスが最高。わざわざ後ろまでキスしに行くの健気すぎる。そのあと、テレビが出てきてサーカスの意義は否定され、戦争も始

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