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足の痛みがなくなっても、確かな「楽しさ」を忘れないで

相模湖プレジャーフォレスト
遊園地のようなアトラクションと、アスレチックや迷路がたくさんのこの場所に、昨日、ほんのちょっと元気のない恋人を連れて、行ってきた。そしていま、全身の筋肉痛とたたかっている。

元気がなく、浮かない顔をしていた彼が、ついた途端に楽しそうな顔をした。遊園地って、それだけで楽しいね。

「まずはゴーカートやろう!」とはしゃぐ彼。しかし、ふたりとも、無免許。

運転席の譲り合いの末に、しぶしぶ運転席に座った彼は、終始かたーい表情。その切羽詰まった顔を見て、助手席で笑い転げる私。「必死なんだよ!」と一喝されます。

そして向かうは、体を動かすアスレチック。「ピカソのタマゴ
27種類のさまざまなアスレチックを1つ1つ順にクリアしていくというもの。体力のほか、頭脳も運も必要とのことで、「よっしゃ!大学院生の頭脳なめんな!」

ーーあっさり撃沈。
頭脳はほぼほぼ使わず。運要素は確かにあるも、圧倒的に体力が大事。そりゃあ、そうよね、アスレチックだもの。

頭脳をあまり使わなかった理由は、かんたん。子供向けのアスレチックだから。
見渡す限り、ちびっこ。前も後ろも、ちびっこ。真剣に打ち込んでいる大人は、私ら2人だけ。大人も使っていいはずなんだけど、な。

少々の居心地の悪さを感じながらも、なんとかクリア。(途中、しんどすぎて2種類くらいとばしたのは、内緒) 足がもう、本当にきつい。

彼も「きつい!むずい!」と言いながらも、その顔にははじける笑顔。
この笑顔には、こちらの足腰の痛みを少しは吹き飛ばす作用があるようだ。
「次あれ乗ろうよ!」嬉しそうな彼を見ては、痛い足をひきずり、歩く。

その後、日没を待って、関東三大イルミネーションのひとつだという明かりを楽しんで、帰宅。

帰宅後も、彼は笑顔だった。そのまま調子に乗って、ひとりお酒を飲み始め、完全に酔っぱらっていた。そうして、ぽつりと言葉をこぼした。

「はな、ありがとう」
「うん?なんで?」
「俺、小さい頃ですら、こんなに楽しかったことはないかもしれない」
「そうなの?」
「自分で『危ない』って言って、あんまりやらなかったんだよね。そういうキャラだった」

意外だと、驚く。キャラというものに縛られて、やりたいことを我慢する、なんて人ではないと思っていたから。

「そりゃあ、ありますよ。誰だって、キャラのひとつやふたつ、あるでしょ」

まだ見ぬ一面を少しだけのぞけたようで、興味深く思う。
私の知らない顔も思いも苦難も、まだまだあるのだろう。過去にも、未来にも。


なんとなく、元気がなくなったら。
呼吸が浅くなって、悲しみやつらさ、妙な葛藤なんかに、支配されそうになったら。
楽しい楽しい日があったことを、ちゃんと思い出してくれるといいなあ、と思う。「楽しい」という感情が、自分にあるのだということを、思い出して欲しいなあ、と思う。

そうして、塞ぎ込むんじゃなくて、ちょっとでも楽しいことをしていて欲しいなあ。遊園地なんて、しょっちゅうは行けないけれど。些細なことでいいから、ちょっとでも心がわくっとするようなことをしていてほしい。本当に、些細なことでいいから。

そうして、とびきりの笑顔をみせてほしい。もちろん、無理はしなくていいからね。

彼だけじゃなくて、みんなも。みんなみんな、そうあってほしい。私も、そうありたい。

全身筋肉痛で苦しむ私とは対照的に、彼は全然、痛くないらしい。なんでだ。

歩くたび、痛む足。
軽い足取りで歩く彼、うなる私を見てはくすくす。

翌日の痛みに差はあれど。
きっと、思い出は血となり肉となり、歩いていく糧となる。


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