心を淡いピンクで満たして

今日、ひとつもチェックをつけられなかったTo doリストを眺め、心の中で静かに舌打ちする。

いつも雲行きが怪しくなるのは、急だ。

予定外の話に巻き込まれるのも、当然、急なことだ。そりゃあ、予定外なんだもの。

明日は早起きしなきゃいけないけれど、きっとうまく寝付けない。心はすっかり焦っている。

「やりたいこと」が、「やっておいた方がいいなあ」なんてことが、手をつけられないうちに、いつの間にか「やらねばならないこと」のように思えてきて。
失われていくわくわくが、ただ悲しい。

ひとつだけでもチェックマークを、と、読みかけの本を手に取った。毎日1章ずつ読むと決めている。
ほんの少し寝不足になるであろう明日の私は、きっといまの私を恨む。そうわかっていながら、しおりを取り、目線をページに落とす。

「あー、なるほど。そういうことなのか」

内容を理解して、新しいものの見方が増える。
心が、すこし高揚して、色づいていく。無の白から、淡いピンク色へ。じわじわと、色づいていく。

ものをわかったときの喜び。

それが、小さいけれどちゃんとある。そのことに、少しほっとする。
あまりに心が焦りに支配されていると、この喜びすら見えなくなってしまうから。

パタンと本を閉じ、帰宅する準備を始める。

情勢的に、そろそろ家にこもって作業した方がいいのかもしれない。

そんなことを考えながら、研究室のある建物を出るころには、心の中で舌打ちを繰り返していた私はすっかり消えていた。

先ほど手に入れたばかりのものの見方を脳内でころがして。勢いよく、自転車のペダルを漕いだ。

途端、ぴゅうと強く吹いた風に乗り、無数の淡いピンク色がこちらに舞い降ってきてくれた。


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