同じ本を繰り返し読む、”再読”のススメ

同じ本を何度も読むことが好きだ。

何度も読んでいる、お気に入りの小説に手を伸ばした。分厚い文庫本の上下2巻セット。

これまで気付いていなかった伏線がいくつもある。前回読んだときとは違う人物の心情描写が、いたく胸にしみる。何度目かの再読なのに、気づけば顔をぐしゃぐしゃにして、泣きながら読んでいた。


再読の習慣は、元々は、仕方なしに始まったものだった。

あまり高頻度では本を買ってもらえなくて、学校の図書館は古くてじめじめしていて嫌で、公立の図書館は少し遠かった。
小学校・中学校の”朝読書”の時間に、読むものに困って、再読に至ったのだった。

その結果、面白い本は再読しても面白いと知った。
むしろ、より一層面白いかもしれない。また違った視点でものを見れたり、オチを知っているからこその発見があったりして、飽きることがない。

そうして、いつしか再読前提の読み方をするようになった。

一度目は、続きが気になって気になって、急いだ読みになってしまう。だから二度目は丁寧に読む。
三度目以降は、メインで描かれていないキャラクターの目線になって読んでみたり、少し時間を置いて、忘れた頃に読んでみたり。

青い鳥文庫の『若おかみは小学生!』にはじまり、あさのあつこの『THE MANZAI』、森絵都の『カラフル』、本多孝好の『MOMENT』、デイヴ・ペルザーの『”It(それ)”と呼ばれた子』、真山仁の『ハゲタカ』 ーー朝読書の時間に、何度も何度も読んだ本たちは、何十年と時が経った今でも忘れられない。

最近になって、この”再読前提の読み方”を、小説だけじゃなく論文などを読むときにも使うようになった。

一度目はさっくりと概要を知るために読み、細かなところは置いておく。(ここで「ちょっと違うな」、って思ったものはそのままにすることもある。)
二度目以降は、気になったところを確認したり、細かな点もじっくり読んでいく。「えーここ違うよ」なんてつっこんでみたり、「私だったらどうするかな」って考えてみたり。

一度ですべてを理解しようとはせず、何度でも折に触れて読み返して、理解を深めていく。その方が、きっと何十年と自分の中に残る。
だって、小学校のときに読んだ『若おかみは小学生!』、結構覚えてるもの。(もちろん、忘れてるところもあるけどね。)

かつて、「なかなか本買ってあげられなくて、ごめんね」と母は謝ってくれていたけれど。でも、そのおかげで、いい姿勢が身についた。

一気にすべてを理解しようと読むんじゃなくて、ちょっとずつ何度も読む。

そうして、”再読”の楽しみを味わいながら、物事への理解を深めていけたらなあ、と思っている。


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