脱力系レシピが教えてくれる言葉や表現の可能性。

現在読んでいる本のうちの1冊がこちら。

料理してみよう!と思ったわけではなく、
ほぼ日のサイトで糸井さんとの対談記事が紹介されていて、
どうやらレシピ本とは思えないような表現の仕方をしているらしいと知り、
言葉好きであり、日々言葉を駆使する人種としては、そっち方面で吸収できるものがあるのではないかと期待したから。

滝沢カレンさんと言えば、テレビなどでも独特の言葉遣いが特徴的で注目されているけれど、
このレシピ本もまさに独創的が過ぎるほどの表現にあふれている。

「この人は、日本語をこわしているのではない。あたらしい日本語をデザインしているのだ。」とは、この本の帯に記された糸井さんの言葉。

デザインしているとまで言っていいのか正直わからないけれど、
この人は言葉を知らないとか、あえてヘンテコリン(笑)な言葉を使っているとか、綺麗な(俗に言う正しい)言葉遣いに反発しているというわけではないということだけはわかった気がする。

それどころかむしろ、言葉や表現することが好きで、
私などが時々やってしまうような浅はかな格好つけなどではなく、
純粋にそして全力でカッコつけた表現、素敵だと思う表現をしようとしているんじゃないかなと感じる。

それから、言葉遣いと同時に物事の見方もすごく特徴的。

読んでみるとわかるけれど、メルヘンかなと何度も疑いたくなるほど、〝物語的に〟料理の過程が記されている。
特に、分量や火の入り具合など、加減を表す表現は、具体的な数値などは用いずとても感覚的。しかも情緒的で笑えたり、ちょっとオシャレでハッとさせられたりしてしまう。
(今のところ、私の一番のお気に入りの物語は「ロールキャベツ」です)

きっとこの方は、何かを理解したり、逆に説明したりする時、物事を物語的にとらえているんじゃないか。もっと言えば、めちゃくちゃ具体的なビジュアルを自分の頭の中に作り上げているのではないか、と勝手に推測。
ゆえに、読んでいるこちら側にも、ビジュアルを伴って内容が流れ込んでくる。それはもうすごい勢いで(笑)
この本が〝わかりやすい〟と評される理由はもしかしたらそこにあるのかもしれません。

ただ、カレン氏の想像力(創造力?)にこちらのそれが追いつかないと、途端にパニックにはなる(笑)
慣れてきたのか徐々に理解のスピードが速まってきている気はするけれど、読み始めはとにかく脳みそが疲れた。
ほかの本や文章を読んだり、自分が文章を書いたりするのとはちょっと異なる脳の部分を刺激されているんじゃないかと思うくらい。

あと、ほど良く適当なところも良い。
「こうしなきゃダメ」ということは一切ないし、そもそもビジュアル的、感覚的なとらえ方をしているから明確な基準もない。かなりの脱力系レシピだ。


そして何より感じたのは、料理にしても、言葉遣いや表現にしても、
これだけ自由になってみても良いのかも、ということ。
彼女のような文章は到底書ける気がしないけれど、エッセンスを少しだけでも取り入れて表現の幅を広げたいな。

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