見出し画像

蹴球談義001 「キャンセル」サッカーのプレイにおけるキャンセルとは?

今日は「蹴球談義」と題しまして、サッカーについて語って行きたいと思います。
僕はサッカーが相当好きです。
幼稚園から中学まで実際にプレイしていましたが、
その後は時折フットサルをするくらいで、今や「見る専」になっています。

好きなチームはJリーグではジュビロ磐田。海外ではリヴァプールです。
リヴァプールが好きというとミーハーに思われがちなんですが、
2004/2005のイスタンブールの奇跡からのファンですので、
一応ファン歴15年以上にはなります。
アルシャビンの4ゴールも悪夢の8位フィニッシュも
ジェラードのスリップも見て来ました。。。


さて、いつも前置きが長くてすいません。

リヴァプールについては語ることが多いのでまたしっかり「リヴァプール回」を作って書きたいと思います。


「キャンセル」についてですね。

この言葉は、最近では日本のファンの間でも定着した
「インテンシティ」や「ハイプレス」「デュエル」などと比べると
まだ知らない方もいるかと思います。

解説者の戸田和幸さんやジャーナリストの小澤一郎さん、中西哲夫さんなどの
コンテンツをよくご覧の方には馴染みある言葉かもしれません。

このキャンセルという言葉ですが、めちゃくちゃ簡単に言うと、

「こっちにパスしようかな、あ!相手にパスコース消された、やっぱこっちに出そう」

これです。

他にも色々シチュエーションは考えられますが、要するに
最初に選択しようとしていたプレイを辞めて、違う選択肢をとる、
ということです。

言葉にすると簡単ですが、サッカーは常に流れているスポーツです。
野球のようにその都度プレイが途切れたり、バスケやバレーのようにタイムアウトもありません。

そのため、選手は常に瞬時の判断を求められます。

これは思っている以上に難しいことです。
僕も一応はサッカー経験者ですのでわかります。
同じサッカー経験者であれば、
味方にパスを出す、という判断を下して、脳から信号が伝わって、
足が動き出して、ボールを蹴った瞬間に、
「あれ、さっきまでフリーだった味方のあいつに敵のマークが付いてる」
となって、カットされるな、とわかりつつもパスをそのまま出す。
という経験がおありでは無いでしょうか。

なければきっと今頃プロですよね。

そして味方や監督に怒られるんです。
「なにマークついてるやつに出してんだよ!」
「そっちフリーだったじゃねえか」

こちらとしては「だってさっき見た時にはフリーだったんだもん…」です。

サッカーは先ほど言ったように常に流れているスポーツなので、
さっきフリーでパスを出せばチャンスになると思っていた味方が、
その1秒後にはもうフリーでは無い、なんてことは日常茶飯事です。

なので、「キャンセル」できるという能力は、
サッカーにおいて非常に重要なスキルになります。

上手いと言われるサッカー選手(単純に足元のテクニックが上手いということではなく、サッカーIQが高いなどと形容される選手のことです)は、
ほぼ全員が優れたキャンセル能力を持ち合わせていると言っていいでしょう。


最近で言うと久保建英選手なんかがそうですし、
先日U-24日本代表のアルゼンチン戦で好プレーを見せた
川崎フロンターレの田中碧選手なんかもこのプレーに秀でていると思います。

昨季をもって引退した中村憲剛さんも素晴らしいキャンセル力をもっていました。
きっとフロンターレの後輩たち、特に中盤の選手には「ケンゴイズム」のようなものが脈々と受け継がれているんでしょうね。
同じくフロンターレの大島僚太選手なんかもそうですね。

そしてその中村憲剛さんと日本代表の中盤で美しいハーモニーを奏でた
遠藤保仁選手、中村俊輔選手なんかも特にこの能力に秀でているレジェンドですね。

海外選手だと日本に来ているイニエスタやシャビ、ブスケッツなどもそうですね。
こうして見ていくと中盤の選手ばっかり?と思いますが、
前線の選手だとスアレスなんかはキャンセル力に優れていると思います。

先ほどあげた日本のベテラン2人に関してはパスの精度やフリーキックなどが注目されがちですが、
齢40を超えてフィジカル的な衰えがあっても第一線でプレイできているのは、
きっと思考スピードが恐ろしく速い、そして物事を俯瞰で捉えることができているからだと思います。
それはまさしく、「キャンセル」に不可欠な諸要素です。

目まぐるしいスピードで展開が変わっていき、常にプレイが流れているサッカーの中で、
今どの選択肢がOKで、どれがNGなのか見極め、その上でOKな選択肢、つまりベターな選択肢の中からベストを選び取り、行動に移す。

これを数秒間の間に行うわけですから、頭の回転の速さと、全体を把握する視野の広さがないと始まりません。

ちなみにサッカーは前後半合わせて90分で行われ、両チーム合わせて22〜30人ほどがプレイしますが、
ボールを保持できるのは一人当たり多くても2分、平均では1分ほどと言われています。

瞬時に色んな選択肢を検討した上で実行とキャンセルとを繰り返していく。
しかもボールに触れられるのは多くてもたった2分。
その上でチームを勝利に導かなければならない。

途方もないですよね。

足が速くて体が強くてボール扱いがうまければ活躍できるような簡単なスポーツではないのです。

「サッカー選手はチャラくて軽薄」なんてことをよく聞きますが、実際そういう人もいるかと思いますが、トップで活躍している人は皆、本当に頭が良いんです。

私たちのように普通に仕事をして生きていく上での頭が良い、とは少し違うかもしれませんが。

もちろん、サッカーが複雑で難しいスポーツで、だからこそ面白く、他のスポーツはそうではないから劣っている。そんなことを言いたいわけではありません。

僕はサッカー以外の色んなスポーツが好きなので見ています(もちろんサッカーと比べたらそこまで詳しいわけではありません)が、

色んなスポーツにもこの「キャンセル」が登場しますよね。

野球だったら、バッターだと外角に外れると思っていた変化球が思ったより際どいコースに来て、見逃すという判断から瞬時にファウルに逃れる判断をしたりすることがあるのではないでしょうか。

バスケだったら、センターにとりあえずボールを預けておこうとパスの姿勢に入ったところ、思いの外ドライブのコースがあってドライブからのレイアップに持ち込む、なんてこともあるのでは。

バレーのアタックと見せかけてのツーとか、
テニスのドロップショットなんかもこの「キャンセル」の部類に入るのではないでしょうか。

他のスポーツにも多々あると思います。

だからサッカー選手が特別優れているというわけではありません。



では、なぜ僕がこの言葉を今回チョイスしたかという話をします。
今後シリーズ化していきたいこの「蹴球談義」第一回に、なぜこんなマイナーなワードを持って来たのか、と言うことですね。
一応GoogleとYoutubeでも検索してみました。やっぱり少なかったです。

それは、日常生活の極々ありふれた場面でもこの「キャンセル」が登場するなあと思うからです。

先日こんなことがありました。

家で猫と暮らしているのですが、たまに床に粗相をしてしまいます。

僕は掃除機をかけていました。
その時茶色い小さな丸い物体が目に入って来ました。

掃除機がその物体の真上を通過するコンマ数秒前の時点では、
もうそれが「アレ」だという判断はついていました。
しかし僕の手は止まりませんでした。

見事に畳の上に茶色い「アレ」が広がってしまいました。

つまり僕は「キャンセル」ができなかったのです。

実際僕はピッチの上でも優れたキャンセル力は発揮できませんでしたからね。
当然の帰結です。

この、日常にもありふれている「キャンセル」ですが、
こんな疑問も出てきます。

「キャンセル力は鍛えることができるのか?それとも先天性のものなのか?」

もちろん持って生まれた才能は大きく作用すると思います。

しかし、些細な工夫であったり、「思考レベル」の練習による底上げ、
心構えを変えるなどは、大人になってからでも可能かと思います。

例えば、部活時代にはできなかったけれど、大人になって草サッカーや草野球、社会人バスケなどに参加した時に、以前より「考えて」動けるようになっている、と言う実感を持ったことがある人は多いんではないでしょうか。

例えば「首振り」なんかもそうですよね。
サッカーだったら、この人上手だなあ、と思った選手がいたら
一度その人がボールを持ってなくても1試合終わるまでその人を目で追い続けてみてください。
きっとボールを持っていない時(オフザボールと言います)、首振りで周囲の状況確認をするその回数が桁違いに多いと思います。

これは正直誰でもできますよね。
いつも日常生活や仕事でドジが多い、歩く時やエレベーターやエスカレーター、人混みやバスや電車の車内、混み合った狭い店内など、「ポジショニング」が下手くそで周囲に無意識に迷惑をかけている人いますよね。
「もっと首振ったな良いのになあ、中田ヒデみたいに」とか思ったりします(笑)

最後に心構えの話をして締めます。
「キャンセル力」と言うのは、いつでも一度下した選択を柔軟にかつ瞬時に変えられることでしたね。
つまり、どんな型にも瞬時に構えることができる。

これは大剣豪・宮本武蔵が五輪書で言っている「有構無構」に通じることですね。

簡単に言うと「型にはまるな」と言うことです。
いつでも「無」の状態からどんな「構」も取ることができる状態が、
一番良い状態である。
ベストな構えは「構えない」こと。
言い換えはいくらでも可能ですが、

この「有構無構」と五輪書と、現代を生き抜く上での心構えは
非常に深いテーマなので、
また今後深掘りして記事にしたいと思います。

今回はサッカーの用語「キャンセル」についてでした。
気づけば猫の排泄物から宮本武蔵まで話が派生してしまいましたが、
今回はこの辺で。

今日もご拝読ありがとうございました。
それではまた。

小野トロ

この記事が参加している募集

スポーツ観戦記

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?