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(続)元祖化学系特許技術者が別分野に挑む苦戦図

「面白い」と言ってくれる方が一人でもいたら、続編を書いてみようと思っていた下記記事(↓)。有難いことに「面白い」と言ってくださった方がお一人おられたので、調子にに乗って、も一つ記事かいてみちゃいたいと思っている。 ※単細胞なんです、ワタクシ(*´艸`*)

化学と化学以外の分野の違いについて、前回は「数値限定の取扱い」をテーマに書いた。
今回は「効果」をテーマにしてみる。「なぜ化学だけ特徴的な取扱いになるか」の所以だと思っているので。

効果の取扱い

私は元々化学系の出願権利化を担当していたが、特許実務はブランクがあり、久しぶりに戻ってきたところである。最近、化学以外の分野の明細書を書く機会を頂戴することがあり、その中で「へっ?そうなんだー」と思ったシーンからお伝えしてみたい。

「従属請求項は、上位クレームからみて新たな別の効果があるかどうかを基準にして、(新たな従属請求項を)書くかどうか検討する。」

という考え方をお伺いした。
私もしばらくぶりに明細書というものを書いていたので、「請求項の書き方って、そんな感じだったっけかー」と思いながら上記の考え方を噛みしめて、必死にクレームを考えたのである。


でもこれって、化学系では少し違うのかもしれない、と思っている。

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  一つの構成には一つの効果がある
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上記の従属請求項の検討方法は、構成対効果が1対1対応である原則に基づくものではないだろうか?

であるとすると、化学系の場合には、必ずしも成り立たないのである。
色んな構成が組み合わさって初めて一つの効果がでる、という場合も往々にしてあるからだ。

例えば、塗料、めっき液といった、いわゆる混ぜ物を思い浮かべると分かりやすいかもしれない。
混ぜ物に入っている構成要素のうち、例えば、主役級の材料である「顔料(塗料の色を決める)」や、「金属(めっきしたいもの)」等に関しては、ある程度、構成対効果が見えやすい。一方、混ぜ物の中には、塗料の塗りやすさや、めっき膜の平滑さなどを担保するために、多くのわき役の材料も含まれる。

そんな色んなものたちが含まれた、塗料やめっき液について、効果を考えてみる。
「塗りやすい」とか、「平らにめっきできる」とか、という効果は、必ずしも1つの特定の構成のみから導き出されるとは限らない。ある材料に由来するかもしれないし、粘度等の特性にも由来するかもしれない。色んな材料が合わさって、全体として初めて出る効果、というのもあったりする。

そういうところが、「この構成があれば、この効果が出るよね」という予見可能性の高い、構造系等の発明と、化学系との大きな違いである。


そんなわけで、化学だと構成と効果の対応関係が予見できないので、データ大事! 実施例と比較例も大事! になってくるのである。
構造系では変形例が大事というお話をお伺いしたが、それに対応するものとして、化学系では実験データが大事なのである。


構造系の「変形例を考える」という作業が発明者以外にもできる、という点は化学系の感覚ではそれって斬新!と思っている。
化学系だと、実験データ自体は発明者にお願いするしかないから・・・。

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