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一緒に行くはずだった君はいつの間にかいなくなっていた

私は子供が苦手だ。
なので、自分の子供ができたときに何がしたいか、というビジョンがまるでなかった。
しかし子供が生まれたら行ってみたいところがあった。

アンパンマンこどもミュージアムである。

私の住んでいる県にできた時からとても気になっていたのだが、私には甥っ子も姪っ子もいないし、一緒に付き合ってくれるような小さい子持ちの友達もいなかったのだ。
子供のいない私が観に行く勇気も無かったので、いつか子供が生まれたらと夢見ていたのである。


「アンパンチャン!」

息子が保育園でアンパンマンを認知したらしく、そう呼ぶようになった。
その時期はインフルエンザが流行っていたので、暖かくなったらアンパンマンこどもミュージアムに行きたいねと夫と二人でよく話していた。

2019年12月頃の話である。

「アンパンマン!」

息子はアンパン「チャン」と呼んでいた彼の正式名称を言えるようになっていた。
しょくぱんまんはまだ言えなくて、なぜかカレーパンマンは「カリーパン」とやたら発音が良かった。

2020年5月頃の話である。

「アンパン、くくぱん、カレーパン!」

息子は「勇気りんりん」を舌足らずながら上手に歌うようになっていた。しょくぱんと発音できないので、「くくぱんまん」と呼んでいる。カレーパンマンは日本人らしい発音になった。

2020年9月頃の話である。




私たち家族はアンパンマンこどもミュージアムにまだ行けていない。
新型コロナウイルスの流行のせいである。
5月の連休は緊急事態宣言でそもそも閉館していたし、これを書いている10月時点でもまだ事態は収束していない。
気にせずに外出する人もいるだろうが、私の住んでいる地方都市は感染者数が少なく、市内初の感染者の個人情報は口伝で私の元にいとも簡単にやってきた。
そこまでのリスクを冒して行く必要があるのだろうが。

「アンパンチャン」と呼ぶ息子とアンパンマンこどもミュージアムに行くことができなかった。

「カリーパン」と呼ぶ息子とアンパンマンこどもミュージアムに行くことができなかった。

「くくぱんまん」と呼ぶ息子ともアンパンマンこどもミュージアムに行くことができないだろう。

始めは興味本位で行ってみたかったその場所に、今ではその時々で呼び方と反応が大きく変わる息子と一緒に行ってみたくなったのである。

でももうその時の息子とは行けない。
子供の成長の早さを不本意な形で知ってしまった。
事態が収束した時、まだ息子はアンパンマンの事が好きかしら。

奇しくも今日はアンパンマンの日なのだ。
このどうしようもない機会喪失のやるせなさはどうしたら良いだろう。

たすけて、アンパンマン。

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