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月曜モカ子の私的モチーフ vol.166「変革の時」

ふだんからガーデンや、緑に触れている人には、何を大げさに! という感じがすると思うのだが、先日「賢いポインセチア」の剪定(枝を切ること)を行った。
 これは2016年の冬に、「うたタネ♪」の常連さんから頂いたポインセチアが、珍しく枯れずに元気に、ずっとわたしの家にいてくれることを、緑の手を持つ母に報告したら「枯れずに(あんたと暮らせるなんて)それはよっぽどそのポインセチアが賢いやつなんや」という名言が飛び出したという逸話に由来する。

 このポインセチアはとても賢いので、赤くこそならなかったが、剪定なども何もしていないのに次の年も元気に育って、引越しの際にも多少ポキポキ枝が折れたが、基本的には水をやり忘れたりしても、ちゃんと生い茂る元気さがあって、わたしは上に上に伸び始めてたポインを見て、ふと「これってこのままでいいのかな? このまま木のように大きくなるのでは?」と思い、初めてポインセチアの鉢植えの育て方を調べた。そしたら、植物たちはだいたい5月くらいには一回り大きい鉢に「植え替え」というのをして、剪定(せんてい)と呼ばれる、間引きをしなくてはならないそうなのだった。
どれくらい切るのだろう? とYou Tubeを見ていると、花屋さんは、散髪に例えると、限りなく坊主に近いのでは? というくらい、葉を全部落として「つんつるてん」にしていた。
それを見習い「つんつる」にするのは勇気がいった。
賢いポイン、大丈夫? わたしなんか息の根止めたりしてないよね!? 
しかし花屋さんが動画で繰り返し言っていた「かわいそうに見えるかもしれないけれど、これをやってあげないと元気に育たないんです」という言葉を頼りに、昨年はやらなかった剪定を行い、ポインは「つんつるてん」になった。

「もう生えてこないのでは!?」と不安に思う気持ちもあったが、わたし自身、いろんな意味で「1から出直し」のつもりでここへ引っ越してきたのだから、過去の「すくすく茂っていた」という栄光にこだわらず、「必ず新しく芽は生える」と考えることにしようと思った。ポインも新たな出発、わたしも新たな出発、新しいことをするときは不安もつきものだけど、それでも、何かを手放し、新しいことに挑んでいかないとダメだよね。

 それから二週間ほど経って、つんつるポインからは小さな芽がたくさん出始めた。嬉しい! 同時に魔女修行(笑 の一環として、魔女のハーブとして、ルーやニーム、ディルの苗を購入し、鉢植えに植え替えたりした。
それでだんだんとわたしも、手や腕を切るような気分でいた剪定を、髪を切る作業と同じように捉えられるようになり、ニョキニョキ出てきたら古いのを切ったり、密生していたらすいたり、ライトな感覚で出来るようになった。  

今、時代は変革の時を迎えている。働き方も変革の時、出版の世界や本屋さんも変革の時。題名は伏せるが今やってる新しいドラマには知り合いが関わっていて、とにかく突っ込んだ話はできないが、製作背景を聞きながらドラマを見ていると、これまでの概念を大切に生きてきたサラリーマンの根幹をえぐるような内容になっている。
 発想の転換や生き方変革を、強く提案する内容になっていて、「ここまでする?」と、プロパガンダを感じずにはいられない。

 先週「スッキリ!」に長渕さんが出ていて、後ろはない、足跡もない、今日しかない、という新曲を歌っていたのだが、トークの中で「思想や世論や考えは、時代によってどんどん変わってしまうし、だからこそそれにしがみついているより、not too late」的な話をされていて、本当にそうだなと思った。

 ある時は教育の中で強くプロパガンダ(=政治的に誘導)された考えが、何かの時節で、途端に無意味なものになってしまう。例えば「天皇陛下ばんざい」てきなものとか。名誉の戦死とか。
                                   例えばわたしのような色んなわらじを履いている人は昔からあまり良しとされずに、定職に就き何かを極めることが良しとされたけれど、現代は「何かを極める」はもちろん良しとして、しかしその同じポテンシャル(素質)を、色んな形態に変化し、色んな仕事に就くことができる柔軟性のある人を評価するように世の中は方向づけ始めている。

 それは何でもやらなくちゃ食べていけないわたしたち芸術家には思ってもみなかったところでの、新しく温かい風であるが(つまりいつまでもフラフラして、のフラフラ、の概念が変わり始めているから、フラフラ歴が長い方が生き抜く術があるような感じになってきているわけなので)、
きちんと日本の流れの波に乗って安定した暮らしを、生涯を通してまっすぐしたい、と、ずっとここで働くぞ、と就職した人たち、それが正しいと繰り返し教育されてきた人たちには、けっこうな平手打ちではないかと思う。
                                    
そういった考えの溝に突然落っこちてどうしていいかわからない人たちが、
急に年金受給スタートが遅れて「“つもり”が壊された」た、今の55歳くらいから60歳くらいの方にも多いのではないか。
しかし日々は続くし、そういう理不尽の中を前へ歩いていくのが社会であり人生である。

                                  
出版の世界の流れも変わりつつある。刷っていては遅いことが増え、書物は、情報発信源から、遺すためのアーカイヴに、目的を変えている。そういった中で“note”みたいに、本屋や出版社や編集者を介さない世界も生まれている。面白いと思ったら書き手と読み手が100円とか200円とかで直接取引きする。発信はwebの方が早い。
けれども書物というものは永劫のこっていくもの。
                                    
わたしは何かの台頭は何かの衰退ではないと思っている。 
そこにある普遍性は留まり続ける。それをちゃんと見極められないと「もうそれは古い」とか言って大切なものを切り捨ててしまう。出版は厳しい。でも「もう本は終わり」とか言ってる人は本当に何もわかっていない人だなとわたしは思う。なんでもかんでもを刷っていた時代の終わりであるだけなのに。
わたしは今のような時だからこそ遺すべきものを書物として時間をかけて書いていこうと思うし、食べていくために世の流れにも身を委ね、
必要なことを必要な瞬間に発信できる、タイムラグのないwebも使っていこうと思う。どちらにしろ、今、変革の時。
                                    
わたしも、賢いポインセチアも、新しい芽は、この変わりゆく時代の潮目に、まだほんのすこし触れたところ。ここからが勝負。

いつだって社会は「ころん」とひっくり変えるから。だからこそ変わらない普遍的なスタンスを胸に。でもいつでも「つんつる」になって1から出直す。

        <モチーフvol.166「変革の時」/イラスト=Mihokingo>

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【New!!】わたしが劇中原稿の制作と主演の中山美穂さんの書く字を書いた映画「蝶の眠り」がGW明けから公開されます!
このHPの予告編にもわたしの手(と字)映ってます!笑

「時雨美人伝 第3回」(by かぐらむら)はこちらから!

☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。

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長く絶版になっていたわたしのデビュー作「蝶番」と2012年の渾身作「誰かJuneを知らないか」がこの度、幻冬舎から電子出版されました!わたしの文章面白いなと思ってくれた方はぜひそちらを読んでいただけたら嬉しいの極みでございます!